研究課題/領域番号 |
23530754
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研究機関 | 聖徳大学 |
研究代表者 |
西 智子 聖徳大学, 心理・福祉学部, 教授 (70383445)
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研究分担者 |
津留 明子 聖徳大学, 児童学部, 准教授 (30439004)
高尾 公矢 聖徳大学, 心理・福祉学部, 教授 (50167483)
高橋 健一郎 聖徳大学, 児童学部, 講師 (10588122)
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キーワード | 子どもの安定 / 保育者の疲労 / 保育所 / 0.1.2歳児 / 疲労の軽減 |
研究概要 |
本研究は保育所で働く保育者の疲労が子どもの心身の安定にどのように影響しているのかを保育者の仕事に着目し、保育の質を保ちながら子どもが安定して過ごすための条件を検証するものである。 今年度は、昨年度行った一次調査の詳細な分析と一次調査から得られた知見をもとに二次調査の質問紙作成及び二次調査を行った。 二次調査は東京・千葉・神奈川の首都圏三県の内、待機児童(平成24年度)の多かった特別区・市町村を中心に2,000か所の保育所に質問紙を送付し,0.1.2歳児担当保育士に記入してもらった。結果928保育所、7,289人から回答を得ることができた。(保育所の回収率46,4%) 加えて,待機児童問題が都市部においても表面化していない新潟県において、0.1.2歳児担当保育者が自らの仕事をどのようにとらえているのかアンケート調査を行い、440人から回答を得た。 一次調査の再分析及び二次調査の一部の結果から導き出された結果は、以下のとおりである。一つには、保育者が捉える子どもの安定・不安定状態の尺度を検証することができた。次に、疲労感の高い保育者は疲労感が低い保育者より子どもの状態を不安定状態と捉えること、やりがいを強く感じている保育者群は、やりがいをあまり感じていない保育者群より子どもの状態を安定状態と捉えていることが統計上確認された。これは保育者の疲労と子どもの関係において、保育内容が子どもの見方によって左右されやすことを考える時、保育の質を保つための重要な側面が明らかになったといえる。また保育者の緊張感が保育に作用している現状も一部現れてきている。 現在は二次調査の一部の分析に終わっているので今後は全体の分析を行い、聞き取り調査を重ね現場の問題を明らかにしていき、その上で、保育者の働き方と1.2歳児保育のあり方について明らかにしていきたい。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
二次調査を大規模に行ったため、その集計及び分析が遅れている。 計画当初は、東京・千葉に限定した500保育所を対象とした二次調査予定であった。しかし、一次調査の結果から、大規模なデーターの必要性が明確になり、待機児童問題との関連も鑑み、その対応に苦慮している神奈川県一部の市町村(横浜・川崎等)も加えることにして質問紙の内容の再検討を図った。そのため二次調査の送付時期が今年度の計画予定時期より、若干遅れることとなった。結果、回収7,289人から回答を得ることができた。しかし、A4用紙8ページ、約180項目のアンケート分析には仕訳作業から項目入力・分析と膨大な時間と経費が必要であり、現在尚作業が継続中である。今年度予算の多くはアンケートの郵送費に使用したため、分析作業の一部は来年度予算によって進めたいと考えている。以上の理由で今年度中にアンケートの項目入力・分析を終了させるべく計画を立てていたがこの部分の遅れをとっている。 また、アンケート調査の分析が遅れたこともあり、その結果に基づく聞き取り調査がまだ行われておらず、研究全体が当初計画に比べると、やや遅い状況となっている。二次調査の全体分析と聞き取り調査を早急に行いたい。
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今後の研究の推進方策 |
25年度は、まず二次調査全体の詳細な分析を行う。二次調査の結果得られた知見をもとに、聞き取り調査を行う。25年度はこの研究の最終年度であり、大規模なアンケートの結果を有効に分析し、現場の仕事状況と照らし合わせ、0.1.2歳児にクラスの保育者の働き方において、疲労軽減のために整理するべき項目を明らかにしていきたい。 研究計画の初年度計画では、聞き取り調査後1.2歳児担当保育者のデイリープログラムモデル及び長時間保育の環境を意識したモデル作りを行い、協力園において6か月間の保育モデル試行を計画していた。しかし、7,000人以上から二次調査の回答をいただいたことは、この問題に対して現場の保育者が高い関心を持っていることの表れであり、分析に対して社会的責任があると捉えられる。つまり、性急なモデル作りにシフトするよりも、調査の詳細な分析と聞き取り調査とを行い、実態と照らし合わせていくことこそ保育者の疲労軽減の要件を明確にする上で重要であると認識するに至った。 また、過疎地と都市部の比較も当初は計画していたが、待機児童問題と保育士不足が更なる社会問題に発展している現状を鑑み、まずは首都圏三県のうち待機児童の多い地域に焦点を絞ることこそ有効であると判断し、過疎地は外し、地域を絞り込んでフィールドワークを行いたい。 以上のことから、最終年度である25年度は、二次調査の詳細な分析と首都圏の保育所における聞き取り調査に重点を置く。その上で保育者の疲労軽減を視野に入れた働き方の方向性と子どもの安定を図る要件について明らかにしていき、1.2歳児保育モデル作りに取り組みたいと考えている。
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次年度の研究費の使用計画 |
25年度は二次調査のアンケート項目のデータ入力・分析と聞き取り調査に関わる費用が必要となる。 二次調査のデータ入力は研究補助者の協力を得ながら進めているが、膨大な量であり、研究をスムーズに進めるためにはデータ入力作業の一部を業者に依頼するための費用が必要となる。調査データの統計解析や、訪問調査法に関して専門的アドバイス得るための謝金も必要となる。 保育者の仕事に関する聞き取り調査については、首都圏の複数の保育所に継続的に通うため、旅費、交通費、謝礼等が必要になる。その他、調査研究に必要な物品購入、通信費、交通費、学会発表、論文投稿、報告書作成費用が必要となる。 繰越金が生じた状況は、データー入力と聞き取り調査が遅れていることにある。繰越金は25年度の研究補助者費用と聞き取り調査の旅費、交通費等に充てたい。
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