研究課題/領域番号 |
23530813
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研究機関 | 千葉大学 |
研究代表者 |
若林 明雄 千葉大学, 文学部, 教授 (30175062)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 社会的認知能力 / 神経整理学的基盤 / 脳皮質血流 / 個人差 |
研究概要 |
本研究では,社会的認知能力の個人差の認知神経学的基盤を検討することを目的としているが,本年度は,その第一段階として,実験に使用する課題の準備と,課題遂行時における被験者の脳の血流測定の準備を行うことを中心とした. 具体的には,実験課題として,静止画による顔写真を使用した心的状態の判断課題,目の周囲の写真を刺激としたEye Task,動画による登場人物の心的状態を判断させるToM能力課題の3種類を社会的認知能力課題として用意するとともに,予備実験によってそれらと同程度の認知的負荷があり,かつ社会的認知能力を必要としない課題(統制課題)として,静止画像による視点取り課題と,動画による刺激を使用した視点取り課題を用意した. 次に,各課題を被験者に推敲させるとともに,課題遂行時の前頭皮質部位の血流反応を,Spectratech OEG-16 を使用して記録した. この時点で明らかになったことは,課題の種類によって,同一個人においても前頭部の血流反応は異なること,同一の課題遂行時でも,被験者間で前頭部の血流反応は異なること,という2点であった.脳皮質の血流に限らず,生理的指標には個人差が大きく,それをどのように統制するかが,生理的指標を使用した研究においては鍵となる.本研究も同様で,本年度の実験で得られたデータをもとに,複数の被験者に共通した神経生理学的反応を引き出す課題刺激を選定することが第一段階として最も重要であると考えられる.幸い,現時点で得られたデータは,単なる個人間のバラツキのみではなく,課題の種類や刺激の条件等によって一定の共通性も示しており,これらを分析することにより,次年度以降の本実験で使用する実験課題や刺激を決定することが可能であると思われる.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本実験では,元々個人差が大きく,不安定であることが知られている生理的指標を用いて,社会的認知能力の個人差の神経学的基盤を検討することを目指している.その点を考慮すると,初年度の実験結果から,予想された反応のバラツキだけではなく,課題の種類(社会的認知能力を必要とするか否か,刺激が静止画か動画か,など)によって,個人間に一定の共通した血流パターンが存在することも示唆されており,本研究計画のアプローチが一定の妥当性を持つことを示している.その点で,研究初年度の成果としては,一定の評価ができると考えている. また,課題遂行時における前頭部皮質の血流パターンには,課題の種類によって個人内に一定の安定したパターンが示されるケースが一定数認められることから,最終的には,社会的認知能力の個人差と脳神経学的反応との間に,何らかの関係性を見いだすことは十分に可能であると考えられる. 以上の結果から,今後本実験の開始までに何点か検討し,詰めておくべき点は残されてはいるものの,当該研究計画において,初年度における目的は,ほぼ順調に進展していると考えることができる.
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今後の研究の推進方策 |
平成23年度の実験結果を基に,まず第一段階として,実験で使用する刺激課題を再構成し,被験者間で比較的共通性が高い生理的反応(前頭部皮質の血流パターン)を示すような課題群によって実験計画を立案する.また,脳の血流反応は,元々個人内でも不安定な部分があるので,個人内で安定した指標となるような部位の特定も試みる. 次いで,課題条件と反応指標を決定した上で,実際に実験を遂行することで,社会的認知能力の使用に特化した神経活動が,前頭部皮質のどの部位でもっとも観察されるのかを明らかにする.そして,こうしたトポロジカルな反応の個人差と,社会的認知能力の個人差との関連性について検討を行う. また,本研究では,予算上の制限から,脳活動の指標として前頭部の皮質の血流のみを測定しているが,これまでの研究成果によって,認知的処理遂行時においては前頭皮質に限らず,脳の様々な部位に活動が見られることが報告されていることから,本研究では,あわせてEEG(脳波)を測定し,そこから特に頭頂部(運動統合野)のμrhythmのdesynchronityを指標とし,mirror neuron 的な視点からも社会的認知能力の個人差と脳活動の関連性を検討する.それによって,複数の脳部位での神経活動を指標として,社会的認知処理における個人差に神経学的基盤があるかどうかを検討することが可能になると考えられる.
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次年度の研究費の使用計画 |
研究2年目では,予算の大半は,実験課題の作成と血流測定に伴う消耗品の購入費用,並びに,一定の負担をかけることになる実験被験者への謝金に数頭する予定である. また,一部の研究成果を紹介するとともに,当研究に対する宇近接領域の研究者からの意見を収集する目的で,研究成果の一部を国際学会において報告する予定であり,そのための旅費として予算の一部を充当する予定である.具体的な研究予算の使用計画内訳直接経費 600,000円物品費 200,000 円,旅費 200,000 円,人件費・謝金 100,000 円,その他 100,000 円
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