研究課題/領域番号 |
23530864
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研究機関 | 学習院大学 |
研究代表者 |
伊藤 忠弘 学習院大学, 文学部, 准教授 (90276759)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 動機づけ / 達成行動 / 関係性 / 他者志向的動機 |
研究概要 |
大学生を対象にした質問紙調査研究を実施した。調査内容は、自己・他者志向的動機尺度、親の養育態度(関係性)を尋ねる尺度、親から期待される内容および大きさの認知を尋ねる尺度、親の学業への関わり方を尋ねる尺度、個人志向的・社会志向的達成動機尺度である。データの分析では、「親の学業への関わり方→親から期待される内容および大きさの認知→自己・他者志向的達成動機のあり方」という因果関係が親との関係性によって調整されるというモデルを検討している。 従来の他者からの期待が学業達成に与える影響には、2つの指摘がなされてきた。1つ目は他者からの期待がプレッシャーとなり、子どもに不安や罪悪感を生じさせ、達成行動に否定的に働くという主張である。2つ目は、期待されることが肯定的な自己概念や自信につながって、達成行動に肯定的に働くという主張である。両方の影響を調整している変数として、単なる期待の大きさだけでなく、期待されている内容の認知や親との関係性に着目して、一見対立する主張を整理することを試みている点に本研究の意義と独自性がある。 またボランティア活動に対する動機を扱った研究のレビューも行った。達成行動とはことなり、ボランティア活動は他者のための行動として受け取られがちだが、現実の行動理由としては「他者のため」だけでなく「自分のため」の理由も挙げられ、1人のボランティアのなかで両者が葛藤したり、調整されたりすることが明らかにされている。この知見は達成動機づけにおける「他者」と「自己」の調整過程を考える上で、重要な示唆を与えるものであった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
研究代表者の所属大学の研究機関より研究費を得ることができたため、当該テーマに関連して、日本と韓国の達成動機づけにおける重要な他者の役割の比較研究を行う機会を得た。このため、尺度の選定と翻訳、調査実施依頼などの手続きに追われることとなった。しかしこの研究から当該テーマを研究するにあたって重要な示唆が得られることが十分に期待される。
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今後の研究の推進方策 |
看護や福祉といった他者志向的動機づけが顕著になりやすいような職業に就くことを目指している学生を対象にしたデータ収集を行い、大学生のデータと比較することによって、自己・他者志向的達成動機尺度の妥当性を検討する。 親の期待や学業への関わり方や高校の学習動機などはこれまで大学生の回顧データに頼ってきたため、中学生や高校生に対して調査を実施することによって、これまでの研究結果を確認するデータを得る。 大学生に対しては、達成動機づけのあり方と親との関係性について、面接調査を継続的に実施すると共に、社会的認知の実験的手続きによる尺度の妥当性を検討する。
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次年度の研究費の使用計画 |
当該研究テーマの成果の発表のために学会に参加する際の旅費として使用するほか、実験および面接調査の研究協力者への謝礼、データ入力およびテープ起こしの費用として使用する予定である。
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