他者に感謝を感じる状況と他者からの感謝を感じる状況を想起させて、その状況での感謝感情、肯定感情、否定感情、負担感等を尋ねた。そしてこれらの反応と互恵的な対人関係意識の関連を調べた。その結果感謝を感じる状況では、互恵意識の高い人が感謝感情も肯定感情も強く感じていた。また返礼意識が援助に伴う心理的負担感と関連していた。さらに損得意識が否定的感情と関連していた。感謝される状況では、互恵意識の高い人が相手の感謝を強く推測し、それに伴う肯定感情も強かった。また返礼意識の高い人が相手の心理負担感を推測しやすかった。 感謝される経験に対する認知や欲求と他者志向的達成動機への態度を調べた研究では、他者志向的動機と自己志向的動機を統合している人が、感謝されることを多く経験しさらにそれに対して喜びの感じやすいことが明らかにされた。 努力観と他者志向的達成動機との関連を調べた研究では、自己志向的動機と他者志向的動機を統合している人ほど、継続的努力が結果を生じさせると信じる傾向と、努力自体に高い価値を置く傾向を保持していた。一方、他者志向的動機に負担感を感じたり、他者志向的動機に利己性を認知している人は、努力が報われるという言説への懐疑を示した。 他者からの声援に対する反応と他者志向的達成動機への態度を調べた研究では、他者志向的動機と自己志向的動機を統合している人が、声援に肯定的に反応していたが、他者志向的動機に利己性を認知する人は、声援を否定的に捉えていた。 本研究全体を通して、達成動機づけにおいて他者志向的動機と自己志向的動機の関係づけのあり方が、親の養育態度や期待の認知、努力観や他者からの声援に対する認知、他者に対する感謝経験や他者から感謝される経験、ボランティア活動のような向社会的活動への態度と関連していることが示され、2つの動機を統合している人の特徴が明らかにされた。
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