研究課題/領域番号 |
23530882
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研究機関 | 久留米大学 |
研究代表者 |
園田 直子 久留米大学, 文学部, 教授 (50171393)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | ADHD傾向 / 注意の配分 / 実行機能 / 重さの系列化 |
研究概要 |
研究の目的は,成人AD/HDの中心的な問題である「不注意」に焦点をあて,活動のどの時点(前段階・実行中・事後評価段階)に不注意が生じやすいのかについて基礎的な研究を行うものである。本研究はADHD傾向をもつ成人が物事の遂行に困難をきたすのは,特に事後段階への注意の配分が不足しているからであるという仮説に基づき,活動前後の一連のproactive,reactiveな注意配分が必要な認知課題を考案し,その遂行において,誤りが生じる頻度が通常の成人より高いが否か,また課題遂行中のどの段階で誤りが生じやすいかを明らかにする。これによりADHD傾向をもつ成人の課題遂行プロセスにおける困難の特徴を明らかにし,より効果的な支援方法への示唆を見出そうとするものである。 この研究に用いる課題として,園田・丸野(2010)の「重さの系列化課題」を用いるという計画であった。この課題は元来幼児期からの推移律の発達をとらえるために考案されたものであり,成人を対象にする場合は課題の提示方法を新たに考案する必要があった。今年度は,研究を実施するために次の点を検討・準備した。(1)課題の適切性について,予備調査的に課題の提示方法,記録方法などの検討を行った。(2)ADHD傾向をはかるための自己評定尺度に関する情報を収集し,用いる尺度の特定をすすめた。(3)結果の分析方法について,デジタルビデオカメラを目視するのみではなく,数量化する方法を検討し,」チェックリストを作成した。(4)実験実施補助協力者は,課題に熟知する必要があるので,協力者の募集と,応募者に対して実験実施の訓練を行った。これらの準備により,平成24年4月からデータの収集をはじめる目途がたった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
申請段階では,平成23年度より,データの収集を始める計画であったが,以下の理由で2011年度内は準備期間にあて,平成24年4月からデータの収集を開始することになった。(1)用いる課題を成人向けに提示する方法の吟味・検討に時間がかかった。(2)実験実施補助協力者の募集と,課題に熟知するための訓練期間が必要であった。(3)結果を分析するために,申請書で購入を予定していた画像解析ソフト(デジタルビデオ3次元動作解析ソフト3DMADT)が,目的とする分析が可能かどうかを業者に問い合わせ,過去のデータを業者からメーカーに送付→テスト→結果のフィードバックを行うなどを行うために時間を要し,結果として画像解析ソフトは目的に合わないことが判明した。そのため,一時計画が挫折し,画像からだけではなく,課題遂行中に実験補助者がチェックリストを用いて課題遂行のプロセスを記録するための記録用紙作成などを行うこととなった。(4)上記の準備を行う間,対象となる成人(大学生)に協力を依頼する時期を逸し,スタートを次年度に繰り下げることになった。
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今後の研究の推進方策 |
本年度は,実験を開始し,データを収集する。まず,広く対象者に自己評定によるADHD傾向尺度を実施し,その結果によって,研究群と対照群を設け,1名ずつ個別に「重さ系列化課題」を実施する。当初の計画では,不注意傾向尺度のみを考えていたが,不注意に加え,ワーキングメモリに関する課題を併せて実施し,「不注意傾向」と「ワーキングメモリ課題の成績」と,「重さの系列化課題」における誤りパターンの関連を分析し,「不注意傾向」と「ワーキングメモリ」が課題遂行におけるproactive,reactiveな注意配分とどのように関連しているかを明らかにする。24年度はデータの収集を実施することが中心となる。25年度は,この結果を詳細に分析し,不注意の起こりやすさの要因と,不注意をカバーする事前あるいは課題遂行中の課題提示方法,または不注意による誤りが起こった後の有効な対処方法について提案を行う計画である。
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次年度の研究費の使用計画 |
当初は,平成23年度にデータの収集を開始する予定であったが,1年遅れたため,23年度は,チェックリストおよび自己評定質問紙の作成のためのプリンタの購入のみを行った。そのため,23年度予算としてあげていた「謝金」「ノートパソコン」の予算296,000円が全額繰越となった。また,予定していた画像解析ソフト(298,000円)が目的に合致しないものであることが判明したので,この予算をどのように使用するかについて検討する必要がある。現在のところ,成果発表のための旅費を1回分しか申請していなかったので,複数の学会に参加できるよう,旅費にあてることを考えている。
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