ADHD傾向を持つ人の不注意傾向と認知的な課題の遂行方略,および誤りとの関連を検討した。参加者は大学生であり,重さの系列化課題を用いた。ADHD傾向尺度得点が高い参加者は逆行的な注意の不足を反映する「比較1回」方略が多くみられるという仮定は支持された。加えて,順向的な注意の不足・衝動性を反映した方略である「比較0回」方略,および何度も比較を繰り返して完成に至る方略も尺度得点の高さと関連していた。この方略は「段取り不足」を,遂行中に注意を補足することで解決する方略と解釈された。ADHD傾向の高い人は,単純な認知課題を遂行する際にも注意の配分が適切に行われていないことが示された。
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