研究課題/領域番号 |
23531185
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研究機関 | 愛知教育大学 |
研究代表者 |
佐々木 徹郎 愛知教育大学, 教育学部, 教授 (20170681)
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キーワード | 算数・数学的活動 / 式表現 / 教授の文化人類学的理論 / ポストモダン数学 / ディスコース分析 / 言語活動 / 教材研究 |
研究概要 |
平成24年7月に開催された韓国ソウル市での「第12回数学教育国際会議」や台湾台北市での「第36回国際数学教育心理学会」に出席して,数学教育研究の国際的動向を知るとともに,現今の課題について議論を深めた。このような中で,算数・数学的活動の段階理論について,新たな観点から検討を加えた。 第12回数学教育国際会議で注目されたものの一つは,フランスのChevallardの「問いのパラダイム」や教授の文化人類学的理論であった。これらは,今日の社会における数学教育への新しい視点を与えている。問いのパラダイムは,社会における数学的な問いにはどのようなものがあるのかを探ることである。これは,わが国では数学的リテラシーを強調するものであり,教師にとっては教材研究の重要性を指摘するものである。また,教授の文化人類学的理論は,本研究の枠組みや方法論として意義深い。 数学的活動に関する理論的研究としては,イギリスのErnest等のポストモダン数学が参考になった。複数の理論や多様な観点を相補的に考慮するすることで適切な指導のデザインをすることである。 算数・数学的活動に関する実践的研究としては,小学校の整数の加法における「魔法の数」の授業を分析した。これは,例えば123にある数を加えると321になる。その数は何かを求め,なぜその数かを考える。また,2桁や4桁など他の桁数ではどういう数になるかを考える授業であった。式への興味・関心を引きつける教材であるとともに,式表現の意義を理解できる授業であった。 これらの授業はディスコース分析を行った。ディスコースとは,言語活動であり,児童・生徒の算数的活動に結びついている。授業における算数的活動を分析するためには,ディスコースを記録し,多様な観点から考察した。この結果,理由の説明は児童には難しい場合があり,理由よりも活動を振り返ることが適切な場合がある。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の成果として,算数・数学的活動の理論をより深く究明することができた。フランスのChevallardによる教授の文化人類学的理論やイギリスのErnestによるポストモダン数学の思想について直接に議論することができた。これらによって,研究の枠組みや方法に対して幅の広い観点を採り入れることができた。 つまり,算数・数学的活動における式表現は,言語活動であり,ディスコースが重要な役割をもっていることを明確にできた。これは,ポストモダン数学の立場にいおいても,「失われた歴史」があり,さまざまな活動が含まれている。 そして,算数・数学的活動と式表現の指導に関する授業記録を収集し,分析することができたのである。そのディスコース分析によって,活動と式表現が結びつく過程や指導を明らかにした。この授業には,式によって理由を説明する活動が含まれていた。児童には,理由の説明は困難なことが分かった。このような場合,教師が児童に数のブロックを操作するように指導し,そして,児童にその操作を振り返る活動を促すことが適切であることが分かった。文章題の指導において,立式を指導するときに,このような知見は,重要な研究成果である。
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今後の研究の推進方策 |
算数・数学的活動と式表現に関する授業や教材を開発することを重点的に行う。さらに,文章題における立式指導に関する事例について,実践的な授業過程を開発する。研究成果を議論するために,国内の学会に参加し,成果を発表するとともに,資料収集をする。 さらに,算数・数学的活動や式表現に関する授業記録をより多く収集し,ディスコース分析する。また,そのような授業研究のために教師との協力関係を構築する打ち合わせを行う。
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次年度の研究費の使用計画 |
該当なし
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