研究課題/領域番号 |
23531316
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研究機関 | 長野大学 |
研究代表者 |
伊藤 英一 長野大学, 社会福祉学部, 教授 (50350822)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 障害者支援 / 情報保障 / 聴覚障害 / インクルーシブ教育 |
研究概要 |
既存の情報保障技術には、すでに情報格差が存在している。例えば、聴覚障害者に対する情報保障としてノートテイク(要約筆記)がある。大学など高等教育機関における障害学生のための情報保障として利用されているノートテイクは教員の音声を支援者によって文字化(視覚化)することで情報が伝えられる。しかしながら通常の授業では教員は音声を発しながら板書をしたり、スライドを提示したり、それらを指し示すなどジェスチャーを交えながら授業を進めている。そのため、聴覚障害学生はノートテイカーが書き記した教員の「音声」を目で読みながら、板書やスライドを確認し、さらには教員の行動にも注意を払うという同時に複数の視覚情報を処理しなければならない。 本研究は、聴覚障害学生の視覚に偏重した情報保障において、負担の軽減をはかり、情報の欠落をできる限り減少させられる情報呈示方法を開発することにある。平成23年度は、授業の情報保障としてノートテイクを利用している聴覚障害学生7名(回収率78%)の学習行動について調査を行った。その結果、教室の黒板やスライドスクリーンの位置を確認した上で自分の座る位置を決めている学生が少ないことが解った。回答者のほとんどが情報獲得の効率や利便性よりも「友人の座った位置」、あるいはノートテイカーが両側に座ることから「学生の少ない位置」を選択していた。また、聴覚障害学生と健常学生の視覚情報処理における差異と共に心的負担について調べることのできる実験方法について検討した。そして、聴覚・視覚による情報呈示/視覚のみによる情報呈示という2種類の情報呈示方法による質問プログラム(注意喚起システム)を用いて、正答率と反応時間について計測することのできる実験システムを試作した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
予定では質問プログラム(注意喚起システム)を10月に試作し、評価実験を含めて年度内から実験を開始する予定であった。しかし、開発委託先の担当者が健康上の理由から出社できず、実験システムの開発が停止してしまったことから実験システムの納品が3月末となった。そのため、当初予定されていた実験システムの評価を次年度へ先送りすることとなった。
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今後の研究の推進方策 |
平成23年度中に予定していた質問プログラム(注意喚起システム)による評価実験を早急に実施する。そして、視覚情報(字幕)配置や文字(大きさ、色)、呈示手段変更した環境において、その困難さ(正答率と反応時間)の違いを明らかにし、さらには字幕情報の発現をリアルタイムに指示(注意喚起)することのできるシステムの開発に着手する。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成23年度中に予定していた質問プログラム(注意喚起システム)納品の遅れに伴い、評価実験については平成24年度に実施することとした。当該実験に関連する経費について24年度へ繰り越すこととなった。
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