研究概要 |
本研究の目的は,「代数体kと有限群Gが与えられたとき,不分岐ガロア拡大L/kでそのガロア群がGと同型なものが存在するか?」という問題を考察し,その応用として代数体kの最大不分岐p拡大のガロア群の構造解析を行うことである. p, qを奇素数とし,kを有理数体Q上のq次巡回拡大とする.また,E1とE2は位数がpの3乗の非アーベルp群で,E1の群指数がpでE2の群指数がpの2乗であるとする.本研究期間を通して,「k上の不分岐ガロア拡大でガロア群が E1(またはE2)と同型なものが存在するか?」という問題を考察した. 平成23年度は,qがp+1の約数である場合を考察し,kの類数がpで割り切れるならば,k上の不分岐ガロア拡大でガロア群がE1と同型なものが存在することを証明した。また,ガロア群がE2と同型な不分岐拡大が存在する十分条件についても結果を得た.これらの結果は,Tokyo J. Math.に掲載予定(印刷中)である.平成24年度と平成25年度は,qがp-1の約数である場合を考察した.この場合は,kのイデアル類群へのガロア群G(k/Q)の作用がある条件を満たすとき,k上の不分岐ガロア拡大でガロア群がE1と同型なものが存在することを証明した.また,平成25年度では,特にPariによる実例計算を行い,(q,p)=(3,7),(5,11)の場合に不分岐E1拡大が存在するようなq次巡回拡大体を構成した.これらの結果は,Proc. J. Acad. vol 90(2014)に掲載された. 本研究では,主に位数がpの3乗の非アーベル群について考察した.当初計画では,もう少し多くのp群について考察する予定だったので,そういう意味では当初計画が十分に達成されたとは言えない.しかし,最終年度の実例計算により,ガロア群がE1と同型な不分岐ガロア拡大を持つような代数体を構成できた意義は大きいと考える.
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