研究課題/領域番号 |
23540070
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研究機関 | 埼玉大学 |
研究代表者 |
長瀬 正義 埼玉大学, 理工学研究科, 教授 (30175509)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | adiabatic expansion |
研究概要 |
当研究代表者は,今年度,おもに接触リーマン多様体上の Kohn-Rossi Laplacian に付随する熱核のトレースの漸近展開係数の表示に関する研究に取り組んだ。手段は当代表者の開発した一般断熱展開理論である。この理論は,本来,トウィスター空間の持つ様々な不変量の研究のために開発したものであるが,その後,Riemann Laplacian に付随する熱核のトレースの研究において有効であることが判明した経緯がある。本研究では Kohn-Rossi Laplacian に関連する研究への応用を目指している。後者の Laplacian は楕円型ではなく,研究の進んでいる楕円型理論が使えず,その研究は満足のいく域にまでは至っていないようである。一般断熱理論に従った研究結果を以下いくつか列挙しておく。 (1)接触リーマン多様体M上の Kohn-Rossi Laplacian □と変形 Heisenberg群H上の断熱 Kohn-Rossi Laplacian □(P) との関係: PはMの点であり,□(P) はその点の近傍における□にある種の変換(断熱変換)を施して得られるH上の Laplacian である。パラメータが付随しておりそれに関するテーラー展開式の係数列は,折り重なって見えなくなっているPでの□の性質を解きほぐしていると思われる。当代表者はその係数列の一般的計算方法や,いくつかの具体的表示を得た。 (2)強擬凸CR多様体(付随する複素構造が可積分である接触リーマン多様体)上の□に付随する熱核のトレースについての研究: (1) の結果よりトレースの漸近展開係数の一般的計算方法を得た。特に強擬凸CR多様体については,その方法に従っていくつかの漸近展開係数を計算した。最初の係数の表示は以前から知られていたが,第2係数の表示は新しい。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
接触リーマン多様体上の Kohn-Rossi Laplacian に付随する熱核のトレースの漸近展開係数に関する研究はほぼ終え,論文 (The heat equation for the Kohn-Rossi Laplacian on contact Riemannian manifolds, 仮題) としてまとめつつある。ただし,証明に一部不備な点が見つかっており現在訂正中であって,まとめ終えるには少々時間を要しよう。
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今後の研究の推進方策 |
まとめつつある論文を書き終えると同時に,手計算によっていた漸近展開係数の計算を,コンピュータを使って進めたい。また,その論文の結果のCR山辺問題への応用を進める
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次年度の研究費の使用計画 |
「次年度使用額」は昨年度の「前倒し請求額400,000円」の残額である。前倒し請求を行ったのはコンピュータの故障で買換えを余儀なくされたためであったが,緊急を要したため昨年分の図書購入や国内出張を一部中止し,コンピュータ購入費用に充てた。残額については昨年度予定していた図書購入の費用等に充てる予定である。今年度分については計画通り使用予定である。
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