研究概要 |
当研究代表者は,今年度,おもに接触リーマン多様体上の Kohn-Rossi Laplacian に付随する熱核のトレースの漸近展開係数の表示に関する研究,及びその結果の Yamabe問題へに応用に取り組んだ。手段は当代表者の開発した一般断熱展開理論である。漸近展開係数の研究は現在まで様々行われているが,係数の持つ基本的性質を調べる程度にとどまっており,係数を具体的に表示することが可能と想像する研究者は見当たらなかった。当代表者の研究成果で強調したいのは,それら係数の具体的表示を求める(基本的微積分だけを使った)計算手段を発見した点である。得られた成果を以下列挙しておく。 論文[1] では,その漸近展開係数の断熱展開係数を使った表示を与えた。後者係数は基本的に大学1年生程度の微分積分の知識だけを使って計算可能であり,結果的に前者係数は(計算量は膨大であるが)本質的に任意高次項まで手計算可能である。実際 [1] では,特に可積分な接触リーマン多様体(強擬凸CR多様体)の場合の第2漸近展開係数の具体的表示を与えた。この計算はほぼ2か月の手計算を要した。[2] では可積分性を課さない場合の計算を Mathematica を使って実行した。 [1] M. Nagase, The heat equation for the Kohn-Rossi Laplacian on contact Riemannian manifolds, preprint(revised), [2] R. Imai and M. Nagase, The second term in the asymptotics of the Kohn-Rossi heat kernel on contact Riemannian manifolds, preprint.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
接触リーマン多様体上の Kohn-Rossi Laplacian に付随する熱核のトレースの漸近展開係数に関する研究はほぼ終え,論文 ([1] M. Nagase, The heat equation for the Kohn-Rossi Laplacian on contact Riemannian manifolds, [2]R. Imai and M. Nagase, The second term in the asymptotics of the Kohn-Rossi heat kernel on contact Riemannian manifolds) としてまとめた。
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