研究概要 |
鎌田氏によって、4次元空間に埋め込まれた曲面を研究するために、平面上のラベルと向きが付けられたグラブで表現する手法、chart が定義された。頂点は次数1,4,6の3種類あり、次数4の頂点を crossing という。この研究の目標は chart を使って曲面結び目を分類することである。 crossing が3個の chart、crossing が4個の 4-chart についてはある程度調べられている。今回は辺のラベルが1,2,3, 4のどれかである 5-chart について調べた。 4-chart では, crossing の種類が1種類しかないのに比べて 5-chart では種類が3種類と増え、複雑になる。全部で15種類の chart について考えないといけない。今回分かったことは次のことである。『 4-minimal 5-chart Γ で、crossing を丁度 4個含むならば、必要ならばラベルを入れ替えたりすると、Γ は次の6つのいずれかである。(1) c(Γ_1∩Γ_4)=4, (2) c(Γ_1∩Γ_4)=3, c(Γ_1∩Γ_3)=1, (3) c(Γ_1∩Γ_4)=2, c(Γ_1∩Γ_3)=2, (4) c(Γ_1∩Γ_4)=2, c(Γ_1∩Γ_3)=1, c(Γ_2∩Γ_4)=1, (5) c(Γ_1∩Γ_3)=4, (6) c(Γ_1∩Γ_3)=2, c(Γ_2∩Γ_4)=2』ここで、Γ_i は Γ のラベル i の辺とその頂点からなる部分グラフで、c(G) はグラフ G に含まれる crossing の個数とする。 今回の研究では、crossing が4個の 5-chart は 4-chart よりかなり複雑であることが分かった。残りの 5-chart を研究しようと思うが、ここから知られていない曲面結び目が発見されることを期待する。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究は更に詳しく4つの crossing を含む 5-chart について調べたい。 この chart は以前の 4-chart に比べ、ラベルの種類が1つ増えるので、目を付ける所が違うかもしれない。そこで、次のような tangle (D∩Γ, D) について調べる。(1) 円板 D の境界と交わる辺は横断的に交わり、crossing は含まない。(2) 円板 D 内の辺のラベルが1、2,3のいずれかである。(3) 円板 D の境界と交わるラベル1の辺の数が2,3である。ラベルの種類が1つ増えたので、以前とは違う複雑さが現れるのではないかと思う。 様々な chart が現れたときに、それらを区別するための不変量についても引き続き調べて行きたい。特に、Alexander module、quandle cocycle 不変量を引き続き研究したい。 またこの研究の2番目の目標であった、white vertex が6個の chart について調べていきたい。white vertex は次数が6の頂点をさす。特に 2-twist spun trefoil を表す chart を含む class、(2,4) 型の chart について調べていきたい。こちらからも、未知の chart が発見されるかもしれないし、分類に必要な不変量の研究の例にもなるだろう。
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