研究課題/領域番号 |
23540107
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研究機関 | 東海大学 |
研究代表者 |
志摩 亜希子 東海大学, 理学部, 教授 (50317765)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2016-03-31
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キーワード | トポロジー / 曲面結び目 |
研究実績の概要 |
chart とは4次元空間内の曲面(曲面結び目と呼ばれる)を上手に平面上に表示する方法である。曲面結び目は図形が複雑なため、まだ画期的な分類表がない。chart を用いて曲面結び目の分類表を作成し、曲面結び目の研究を更に活発にしていくことが研究の目的である。 chart は3種類の頂点があるグラフである。その内、crossing と呼ばれている頂点がある。また、1 から n-1 のラベルのどれかが各辺に付けられている chart を n-chart という。今まで分類表作成のために、crossing の数が3個以下の n-chart、および crossing の数が4個の4-chartついて調べていた。今回は、crossing の数が4個の 5-chart について調べた。5-chart は辺のラベルの種類が 1,2,3,4と4種類になる。丁度4つの crossing を含む 5-chart では、chart の種類が9種類と増える。 今回の研究により、定理『丁度4つの crossing を含む球面を表すような C-minimal 5-chart は存在しない』が得られた。更に、一部を一般化することが出来、『丁度4つの crossing を含む C-minimal n-chart に対して、c_1,n-1=4 ならば、次数が1の頂点 black vertex の数が 2n 個以上である。』も得られた。この系として、『丁度4つの crossing を含み、c_1,n-1=4であり、球面を表すような C-minimal n-chart は存在しない』も示された。ここで、c_1,n-1 はラベルが 1 とラベルが n―1 の辺からなる crossing の数である。未知の chart を発見することにはならなかったが、研究するために便利な理論を組み立てることが出来た。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
この研究目標は、大きなものとして、chart を使って曲面結び目を分類することを上げた。その内の1つである『minimal n-chart で4つの crossing を含むものについて調べる』ことについて引き続き研究を行った。 当初の目標ではラベルの種類が何種類もある n-chart について何らかの結果が得られると思っていた。4-chart を調べていた時点では、4つの crossing を含む n-chart はかなり複雑そうに見えた。今回は去年に引き続き 5-chart について調べた。5-chart を調べ、一部の場合は n-chart に一般化ができた。 更に、次のような重要な性質も分った。crossing はラベルが2種類の辺の端点になっているが、このラベルの差が大きいと、C-minimal chart ではないと言う一般的な性質も示すことが出来た。今まで調べて来た 4-chart や 5-chart は辺のラベルが 1,2,3,4 のいずれかであり、今まで調べた chart は C-minimal chart の内、重要な部分に当たることも分った。 C-minimal n-chart で4つの crossing を含むものについて、後、もう少し調べればいい所まで、研究が進展したように思える。
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今後の研究の推進方策 |
今後は4つの crossing を含む n-chart について調べて行きたい。まずは、辺のラベルが、1,2,・・・,n-1 と増えるので、どんな種類の crossing があるかを調査する。次に、今年度得られた C-minimal chart の性質を使って、実際 C-minimal chart である可能性がある場合はどれか調べる。 その際に複雑と思われる chart が、同じ種類の crossing が多く含まれる chart であると思われる。その為に、同じ種類の crossing がある領域を詳しく調べる必要があると思われる。 また、本研究課題の2番目に挙げた white vertex が6個の chart についても調べて行きたい。こちらは、上の crossing が4つの chart と比べて、 crossing の数には制限がないことが、複雑な所である。white vertex が5個以下の chart が既に調べがついているので、その手法を用いてまずは調べて行きたい。偶数個の white vertex を含む chart には、具体的な chart が多くあるので、こちらの方向からも未知の chart があるか調べて行きたいと思う。 今年度は、この研究課題の最終年度であるので、今までの結果をまとめていきたいと思う。
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次年度使用額が生じた理由 |
今年度は長期の海外研究休暇のため、物品を購入する必要が余りなかった。発表のための旅費としてのみ使用したため、使用額が大きな金額にならなかった。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度は、今年度に多く得られた結果を積極的に発表していこうと思う。その為に、いつもの年よりも、旅費が多くかかると思われる。また、論文の整理や、出張先でも簡単に見る事が出来るように iPad 等の電子機器を購入しようと思う。また、論文作成や不変量計算のプログラムを作るのためのパソコンを購入予定である。
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