研究課題/領域番号 |
23540139
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研究機関 | 山口大学 |
研究代表者 |
北本 卓也 山口大学, 教育学部, 教授 (30241780)
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研究分担者 |
柏木 芳美 山口大学, 経済学部, 教授 (00152637)
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キーワード | 数式処理 / 制御系設計 / 数値数式融合算法 / 冪級数展開 / Pade近似 |
研究概要 |
数値数式融合算法を用いた制御系設計の理論および応用面での研究を進めた。理論面では、記号を含んだシステムに対して、その記号を生かしたまま制御系設計を行う方法などの研究を行なってきた。具体的には、制御系設計に広く用いられている Generalized KYP Lemma を記号が使えるように拡張し、記号を含んだ形での制御系設計を可能にしている。また、記号を含んだシステムに対して、H∞ノルムの最小化を行う計算法なども提案してきた。 これら理論を実際に応用する際に最も問題となるのは、本格的な設計問題に適用すると、数式が複雑になり、計算が余りにも重くなることがあることである。計算誤差を許容しながら効率的な計算を行う数値的制御系設計法に対して、厳密計算を基礎とする数式処理を用いる制御系設計法ではこの計算の重さが特に問題となる。 この研究においては、この計算量の問題を冪級数展開やそれを用いた Pade近似を用いて解決しようとしている。これらの冪級数展開やPade近似は、これまでも工学の分野で数式の近似式として使われてきたが、本研究では行列に対する Pade近似や Pade近似の多変数への拡張などを行う。Pade近似を多変数へ拡張するときには極の存在が問題となるが、Quantifier Elimination という数式処理の技法がこの問題の解決に活用できることがわかって来ており、数式処理の有用性を示す重要な例ともなっている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
理論面での研究はほぼ順調に進んでいる。上の「研究実績の概要」で述べたように、記号を含んだシステムに対する制御系設計の方法や、計算された数式(多くの場合が複雑な式となる)を冪級数展開やPade近似を用いて近似し、制御系設計に活用する方法などを研究が進んでいる。後、残しているのは、含んだ数式を冪級数展開またはPade近似した時の誤差評価の検討である。 それに対して、応用面での研究は若干遅れている。これは理論を実現し、実際の計算を行うシステム(プログラム群)の開発に予想以上に手間がかかっていることの影響を受けてのことである。システムの開発に手間取っているのは、当初、研究対象ではなかった Quantifier Elimination も活用できることがわかったため、この Quantifier Elimination もシステムに組み入れる必要が出てきたためである。
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今後の研究の推進方策 |
まず、研究が遅れ気味である応用面に注力する予定である。特に、応用を支えるシステム開発を優先的に行う。システム開発がある程度整うと同時に、そのシステムを用いて実際の制御系設計を行い、応用面での研究を充実させる。 理論面では、数式を冪級数展開やPade近似で近似する際に生じる誤差の評価や解析を重点的に行う。これは実際の制御系設計の結果とも深く関わってくるので、応用面と連携しながら進める必要がある。 また、これまでの研究結果をまとめて、数式処理や制御工学の学会での発表も行なって行く予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
予算は概ね予定通りに消化したが、端数的な金額が残った。 次年度の「その他」の費目として使う予定である。
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