通常、数式処理を伴う計算を行う場合は計算誤差等は許されないため、数値計算で多用される浮動小数点数やべき級数を用いることができない。これは工学などの数学の応用分野において致命的な問題となるため、これまで制御系設計が制御系設計などに活用されることは限られてきた。本研究では、べき級数演算を活用することで数式処理計算に伴う困難を緩和し、制御系設計に数式処理を活用することを目的としている。 本研究では、数式をべき級数展開し、打ち切りべき級数として計算を行う。打ち切りべき級数に対しては四則演算が可能であるため、柔軟な計算が可能になる。計算結果はべき級数の形で計算されるが、これをPade近似に変換することで計算精度を上げることができる(これはべき級数にイプシロン加速法を適用することと同値である)ため、Pade近似への返還を多用してきた。この方法はパラメータが1つ(1変数)である場合にはうまくいくが、パラメータが2以上になった場合は多変数のPade近似を行う必要がある。多変数のPade近似はいろいろな方法があるが、1変数のPade近似を自然な形で拡張したものを使うと計算されたPade近似が展開点の近くに極を持つことが多く、応用が困難となる。そこで数式処理の分野で最近、研究の進んでいる QE ( Quantifier Elimination ) を用いて、展開点の近くでは極を持たないような多変数 Pade近似法を開発した。
|