研究課題/領域番号 |
23540249
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研究機関 | 北里大学 |
研究代表者 |
藤原 俊朗 北里大学, 一般教育部, 教授 (00173493)
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キーワード | 国際情報交換 / カナダ / メキシコ |
研究概要 |
等質量三体の平面運動における Saari 予想について、Newton ポテンシャルの場合の証明も完成し出版された。 Newton ポテンシャル、すなわち、現実の天体運動を支配しているポテンシャルの下での Saari 予想の証明の難しさは、三体が構成する三角形の形の自由度と大きさの自由度が互いに影響を与えあうところにある。したがって、並進運動と回転運動の自由度を除いた後に残る、大きさの自由度 1 つと形の変数 2 つの 3 自由度の系を扱わねばならないところにある。(我々が、この一つ前に Saari 予想を証明した「強い力」の下での運動では、大きさの自由度と形の自由度を分離して扱えたので、問題が単純であった。)3 つの変数のうち 1 つは Saari 予想の仮定、コンフィグレイショナルメジャー(慣性モーメントの平方根とポテンシャルの積)が一定という仮定、を使って消去できるはずなのだが、これがなかなか厄介であった。私は共同研究者とともに、等質量三体問題の持つ対称性、置換群の下での対称性を使って、上手に変数を一つ消去することができた。 また、この操作を通じて、形の運動を表す変数の幾何学的な意味を理解することができ、さらなる研究の道標を見つけることができた。 これらの成果の一部をデンマークの学会で発表した。また、一連の研究をまとめたものをカナダでの研究会で詳しく報告する予定でいたが、大学の業務の都合でやむなくキャンセルした。 三体8の字解の研究については、ほとんど進展がなかったが、上記の形の運動を表す変数の幾何学的な意味が理解できたので、その幾何学的な解析方法を考えているところである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
研究計画の一年目は順調であり、予想以上の成果が上がった。当該年度である二年目もおおむね順調に推移していたが、この年から大学での新しい職務につき、慣れない仕事と多忙の為研究が遅れており、また、予定されていた研究仲間との交流も果たすことができなかった。
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今後の研究の推進方策 |
今年度に入って、新しい職務にやや慣れてきた事から、再び研究を活発化する予定である。 まず、Saari 予想については、これまでは三体の質量が等しい場合のみを扱ってきたが、今年はこれらが一般に異なっている場合について、証明を拡張する事を考えている。その為に使える対称性は見当たらないので、かなり大規模な計算を力ずくで行う事になるだろう。 三体8の字解の研究については、すでに見つけてあるラグランジュアンや運動方程式を点検し、なにか使える対称性がないかどうかの検討から始める計画である。
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次年度の研究費の使用計画 |
おもにソフトウェアの更新と旅費、および書籍の購入に使う。 ソフトウェアの更新は、私の研究に欠かせない数式処理ソフトの更新である。 旅費については、今のところ、以下の3つが予定されている。8月初旬にはメキシコで開催される国際会議に出席し、研究仲間と大いにディスカッションする。また、8月末にはカナダで開催される研究会において、昨年果たせなかった研究報告を行い、今後の研究の方向について仲間たちとディスカッションする。12月には、台湾で開かれる研究会に出席し、今年新たに得られるであろう成果を報告する予定である。
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