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2011 年度 実施状況報告書

格子QCDによる重いクォークを含むエキゾチックなハドロン原子核系の研究

研究課題

研究課題/領域番号 23540284
研究機関東京大学

研究代表者

佐々木 勝一  東京大学, 理学(系)研究科(研究院), 助教 (60332590)

研究期間 (年度) 2011-04-28 – 2015-03-31
キーワード量子色力学 / 格子ゲージ理論 / ハドロン構造 / エキゾチックハドロン / カラーの閉じ込め / チャーモニウム / 重いフレーバー物理
研究概要

これまでクォーク間ポテンシャルとしては、Wilsonループを使った、つまりクォーク質量無限大の極限においてはよく研究されてきた。クォーク質量が有限な効果については、摂動論的にクォーク質量の逆数を展開パラメーターとしてその効果が見積もられてきたが、そのような展開はチャームクォークの質量近傍では破綻していると考えられるため、チャームクォークの従うクォーク間ポテンシャルは完全に理解されているとは言い難い状況である。本研究において、格子QCDによる核力ポテンシャルの導出で成功した:二体ハドロン間のBethe-Salpeter振幅からハドロン間ポテンシャルを導出する定式化をクォーク-反クォーク系に応用することで、有限クォーク質量でのクォーク間ポテンシャルの導出に成功した。さらにクォーク質量無限大においてWilsonループの結果と自然に繋がることもクェンチ近似の格子QCD数値計算によってそれを示しすことに成功した。この新しい方法ではスピン-スピン相互作用も精度よく計算することができ、スピン-スピン以外のLSやテンソル相互作用項なども含めたスピン依存の相互作用の導出も格子QCD数値計算により可能となった。このことから、QCDの第一原理計算よりチャーモニウムにおけるクォークポテンシャル模型の精密化の道が拓いたといえる。さらにPACS-CS collaborationによって一般公開されている2+1フレーバーの現実的なQCDゲージ配位(π中間子が156 MeVに相当)を活用して、チャーモニウムにおけるクォークポテンシャル模型の精密化も試みた。これらの新しい研究成果は、今後の本研究課題における重いクォークを含むエキゾチック中間子の研究において重要な役割を担う。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

当該年度に計画していた核子ーチャーモニウム間相互作用を精密に決定する為の格子QCD計算も予定通り、2+1フレーバーの動的格子QCD数値計算にアップグレードが完了した。予備的なデータ解析において、これまでのクェンチ近似における格子QCD計算と矛盾せず、精度に関しても充分な結果が得られることが確認できた。さらに、当初の研究計画に加えて、これまで2体のハドロン間ポテンシャルを計算する方法として用いてきたBethe-Salpeter振幅による方法をクォーク・反クォークの2体系に応用する新しいアイデアを提言し、チャーモニウムにおけるクォークポテンシャル模型の精密化の道を拓いた。この新しい方法によって今後の当該申請課題の目的の一つである「重いクォークを含むエキゾチック中間子の研究」に関しても、新たな示唆を与えることとなった。

今後の研究の推進方策

今後の研究の進め方としては、まず昨年度までに格子QCD数値計算の完了している核子ーチャーモニウム間相互作用に関するデータを詳細に解析する必要がある。さらに、それらを早急に取りまとめ、チャーモニウム原子核の可能性についての研究に着手する必要がある。また、前年度に提唱したBethe-Salpeter振幅から有限クォーク質量でのクォーク間ポテンシャルの導出に関する新しい方法をさらに押し進め、格子QCDで精密化したクォーク間ポテンシャルを利用して、エキゾチック中間子の探索にも取り組みたい。

次年度の研究費の使用計画

当該年度までの得られた研究の成果を国内外に広く発表する機会を持つ必要があり、本研究経費における研究発表に伴う旅費は重要な位置を占める。また、研究計画の拡大も視野に入れて、新たな計算資源の確保は急務となっている。次年度以降の新しい計算資源として有望なものとして、東京大学情報基盤センターで新しく運用が開始される、スーパーコンピュータFX10が特に挙げられる。このスパコンは理化学研究所と富士通が共同で開発した世界最速「京」スーパーコンピュータの廉価版であり、すでに京スパコンを使った研究に実績のある理化学研究所の初田量子ハドロン研究室グループとのスパコン利用に関する情報の交換を基本とする綿密な研究打合せを通じて、このFX10の次年度以降の利用を積極的に取り組む必要がある。さらに当初の研究計画通りに、グラフィックスカード(GPU)を用いたGPU並列計算機の利用も必須であり、そのための研究費の活用も不可欠である。

  • 研究成果

    (4件)

すべて 2012 2011

すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (3件)

  • [雑誌論文] Interquark potential with finite quark mass from lattice QCD2011

    • 著者名/発表者名
      T. Kawanai and S. Sasaki
    • 雑誌名

      Physical Review Letter

      巻: 107 ページ: 091601

    • DOI

      10.1103/PhysRevLett.107.091601

    • 査読あり
  • [学会発表] 格子QCDに基づくスピンに依存する重いクォーク間ポテンシャルの研究2012

    • 著者名/発表者名
      佐々木勝一
    • 学会等名
      日本物理学会 第 67 回年会
    • 発表場所
      関西学院大学西宮上ヶ原キャンパス
    • 年月日
      2012年3月26日
  • [学会発表] 重いクォークを含むエキゾチックなハドロン・原子核の探索に向けて2011

    • 著者名/発表者名
      佐々木勝一
    • 学会等名
      新学術領域「素核宇融合」×「新ハドロン」クロスオーバー研究会(招待講演)
    • 発表場所
      理化学研究所計算科学研究機構
    • 年月日
      2011年6月23-24日
  • [学会発表] 格子QCDによるクォーク間ポテンシャルの精密化2011

    • 著者名/発表者名
      佐々木勝一
    • 学会等名
      「素核宇融合による計算物理学の進展」研究会(招待講演)
    • 発表場所
      三重県志摩市、合歓の郷
    • 年月日
      2011年12月3-5日

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公開日: 2013-07-10  

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