研究課題/領域番号 |
23540284
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
佐々木 勝一 東北大学, 理学(系)研究科(研究院), 准教授 (60332590)
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キーワード | 量子色力学 / 格子ゲージ理論 / ハドロン構造 / エキゾチックハドロン / チャーモニウム |
研究概要 |
本研究では、2009年3月にフェルミ国立加速器研究所において、J/ψ中間子とΦ中間子の閾値 近傍で発見された非常に幅の狭いY(4140)粒子について格子QCD数値計算を用いて構造理解を行なった。特に、J/ψ中間子とΦ中間子による閾値は、他のハドロン二体の閾値から比較的孤立しており、Y(4140)粒子をJ/ψ中間子とΦ中間子の散乱における共鳴状態として同定することが、他のエキゾチック粒子に比べて容易である。もちろん現実の実験でJ/ψ中間子とΦ中間子の 低エネルギー弾性散乱をさせることは不可能であるので、格子QCDによりJ/ψ中間子とΦ中間子のS波散乱、P波散乱の散乱位相などの低エネルギーの相互作用を数値解析し、Y(4140)のJ/ψ(ccbar)中間子とΦ(ssbar)中間子の2つの異なる フレーバーのクォーコニウムの共鳴状態の生成可能性を探った。そのために、ほぼ物理点(π中間子 が156 MeV相当)に対応する2+1フレーバーのPACS-CSゲージ配位を利用したフル格子QCD数値計算において、J/ψ中間子 とΦ中間子の閾値近傍におけるS波とP波散乱位相の計算を行なった。Y(4140)は閾値近傍であること、その崩壊幅が非常に狭いことから、従来のフーリエモードを利用した運動量の解析方法ではY(4140)の探索は不可能(一 辺がLとしたLの3乗となる有限な体積中の運動量は2π/Lを最小単位とした不連続な値しかとれない)であったが、研究代表者らは一般化した境界条件(ツイストされた境界条件)に着目し、閾値近傍でほぼ連続的にS波とP波の散乱位相の運動量依存性を調べることに成功した。格子QCDによる第一原理計算としては、S波、P波とも散乱位相にはJ/ψ中間子とΦ中間子の共鳴状態の形成のシグナル(散乱位相は90度を越える)は確認できず、Y(4140)の存在可能性に疑問を呈する結果となった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当該年度に予定していたチャーモニウムに崩壊するエキゾチック中間子の研究として、チャーモニウムの一つJ/ψ中間子とΦ中間子の閾値 近傍で発見された非常に幅の狭いY(4140)粒子についての構造理解に対して、格子QCD数値計算による模型に依らない一定の結果を出す事ができた。さらにその研究において提唱した新しい方法、一般化した境界条件(ツイストされた境界条件)を用いた拡張されたルシャーの有限体積法は、他のエキゾチック候補のハドロンに対しても有効な方法であり、今後の当該申請課題の目的の一つである「重いクォークを含むエキゾチックな中間子の研究」をさらに促進できる契機を与えることになった。
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今後の研究の推進方策 |
当該年度は、前年度に提唱したアイデアとは独立な異なる方法を開発し、別の視点からエキゾチック中間子の探索に取り組んだが、次年度はこれまで2年間の研究の蓄積を活かして、2つの方法を相補的に組み合わせた、格子QCD数値計算による、より詳細なエキゾチック中間子の構造研究を行ないたい。また、当該年度でまとめきれなかった前年度からの研究、格子ーチャーモニウム間相互作用に関する研究を早急にまとめ、チャーモニウム原子核の可能性についての研究も完結したい。
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度使用額は、当該年度の研究を効率的に推進した結果、当初予定していた計算機使用を行なわず、そのための計算機使用料に相当する分が未使用となったために生じたものであり、平成25年度請求額と合わせ、平成25年度の研究遂行として以下のような使用を予定している。当該年度までに得られた研究の成果が着実に蓄積しており、ますます国内外に広く発表する機会を持つ必要性が高まっている。そのため、本研究経費における研究発表に伴う旅費は重要な位置を占める。さらにこれまで提唱してきたいくつかのアイデアを当該年度までにおいて有効であることを実証してきたので、次年度以降の研究計画も広がりをみせ、そのための計算資源の拡充は急務である。そういった理由ですでに当該年度より、理化学研究所情報基盤センターのスパコン利用も開始し、スパコン利用に関する情報の交換ため、理化学研究所の初田量子ハドロン研究室グループとの情報の交換や研究の連携のための綿密な研究打合せも当該年度と同様、次年度も引き続き行なう。また一定のリソースの確保として東京大学情報基盤センターのスパコンの年間利用としての計算機使用料に使うほか、当該年度までにまだ手つかずとなっている、グラフィックスカード(GPU)を 用いたGPU並列計算機の利用のための研究費活用も考えている。
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