研究課題/領域番号 |
23540372
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研究機関 | 福岡大学 |
研究代表者 |
栃原 浩 福岡大学, 工学部, 研究員 (80080472)
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研究分担者 |
水野 清義 九州大学, 総合理工学研究科(研究院), 教授 (60229705)
白澤 徹郎 東京大学, 物性研究所, 助教 (80451889)
小森 文夫 東京大学, 物性研究所, 教授 (60170388)
鈴木 孝将 福岡大学, 工学部, 教授 (10580178)
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キーワード | 酸化シリコン超薄膜 / エピタキシャル超薄膜 / 半導体/絶縁体接合 / MOS構造 / シリコンカーバイド / バンドギャップ |
研究概要 |
平成25年度においては、サンプル作製と走査トンネル顕微鏡 (STM)装置への装着が比較的易しいサンプルであるSiCを中心に研究を行なった.六方晶SiCの基底面には(0001)と(000-1)面とがあり、結晶の表と裏の関係となっており、それぞれ、最表面にはSiおよびC原子が存在していて、Si面、C面と呼ばれている。平成25年度においては、C面上の結晶性酸化シリコン単層膜に研究を集中した。Si面と同様に(√3x√3)R30の周期配列(今後、簡単のためSQRT3と書く)を示すが,その構造と化学組成は少し異なっている。Si面のそれの化学組成がSi2O5であるのに対して,C面のそれはSi2O3である。この結晶性酸化シリコン単層膜は正確にはSiC(000-1)-(√3x√3)R30-Si2O3と表示される。 サンプルのSQRT3を低速電子回折(LEED)で観察したところ、シャープな(√3x√3)R30のスポットが得られたので,STM装置(@福岡大学)で観察した。Si面のときと同じく、表面は平滑ではなく直径が2~5nm、高さ約1 nmの円盤状の物質(今後、ナノ粒子と呼ぶ)が存在していた。これらのナノ粒子はSiO2であると考えられた。加熱によりナノ粒子のみを取り除く方針を立てた。温度を900-1000Cの間で10-20Cずつ上昇させ、STM観察を室温でおこなった.1000Cではナノ粒子を完全に取り除くことができたが,結晶性酸化シリコン単層膜内に欠陥が多数生じているのを見出した.. 実験方針がまとまったので,東大物性研の分担者の研究室の低温用STM装置で、原子分解像とバンドギャップ測定をおこなった.970Cの加熱で、SQRT3に関して良好なSTMとバンドギャップの結果が得られたので,Applied Physics Lettersに論文を投稿し,掲載された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
「研究実績の概要」の項で記したように、C面上の結晶性酸化シリコン単層膜SiC(000-1)-(√3x√3)R30-Si2O3の原子分解STM像とバンドギャップが得られ、原著論文として国際的専門学術誌に掲載された。このように一定の成果は得られたが,比較対象であるもう一つの結晶性酸化シリコン単層膜であるSi面上のSiC(0001)-(√3x√3)R30-Si2O5の実験において、まだ明瞭な原子分解STM像と再現性と正確性のあるバンドギャップの測定がなされていない。また,本研究は平成25年度で終了の予定であった(実際は1年間の延長が認められた)ことも考慮して、達成度は「やや遅れている」と自己評価した.
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今後の研究の推進方策 |
平成26年度の1年間の延長が認められた.さらに、代表者は引き続き福岡大学の研究員を認められた.分担者3名も引き続き、研究分担していただけることになった.26年度の研究予算は25年度の未使用分になるので、予算は少額である。 今後の研究方策であるが,前項目で記したように、まだ信頼性の高いデータがとれていないSi面上のSiC(0001)-(√3x√3)R30-Si2O5の原子分解STM像とバンドギャップを確実なものとして捕らえることが目標である。まず、未整理のデータを解析した後に,福岡大学において室温STMを用いてSiC(0001)-(√3x√3)R30-Si2O5のfilled-stateとempty-stateでの原子分解STM像を得ることをおこなう。25年度の研究により,ナノ粒子を取り除くとともに結晶性酸化シリコン単層膜も崩壊し始める結果を得ている。従って,ナノ粒子のない結晶性酸化シリコン単層膜を得ることは、難しいかもしれない.しかし、狭いフラットな領域においてナノ粒子のいない結晶性酸化シリコン単層膜を作り出すことは可能と思われるので,そこでの原子分解能STM像を得ることを目指す.それが得られたら,バンドギャップの測定をおこなう.これらに成功したならば、論文を執筆して国際的学術誌に投稿する.また、国際会議において発表の予定である.
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次年度の研究費の使用計画 |
当初、本研究は3年計画であったが,1年間の延長願が認められた.3年度目に論文を公表する等の成果が得られたので、外国で開催される国際会議において成果を発表したいと思ったが、3年度目中には適切な会議が開かれなかった.4年度目の平成26年の夏には、イギリスで固体表面構造国際会議が開催されるのを知り、1年間の延長願を申請した.このような理由により,外国旅費相当分などが未使用となり,次年度使用額が生じた. 平成26年7月にイギリスのコベントリー市のWarwick Universityで開催される第11回固体表面構造国際会議において本研究の成果を発表するための旅費,登録料等に充てる.会議の前後に,類似の酸化物超薄膜の研究を行っているイギリス、ロンドンのUniversity Colledge of LondonとチェコのプラハのCharles Universityを訪問し,研究上の交流を図ることにも使用する.福岡大学で8月に開催されるThe IUMRS International Conference in Asiaの登録料等にも使用する.
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