研究概要 |
酸化物超伝導体に関して、走査トンネル顕微鏡を用いて原子レベルの局所電子状態の観察を行い、超伝導、擬ギャップ、4×4構造の関係を探るため、Bi_<2-x>Pb_xSr_2CuO_<6+d>(Pb-Bi2201)単結晶を用いてトンネルスペクトルの測定をった。また、参照物質としてBi_2Sr_2CaCu_2O_8,Bi_2Sr_2Ca_2Cu_3O_<10>および鉄砒素系超伝導体の超伝導特性ならびに磁場中走査トンネル顕微分光の測定を行い、その結果を日本物理学会および台湾で開崔された「新規超伝導に関する国際会議」において報告した。x=0.32を持つ単結晶ゼロ磁場および7Tの磁場中のトンネルスペクトルを測定し、比較を行った。ゼロ磁場では±10mV付近にピークを持つトンネルコンダクタンスを観則した。このピークを示す値は5~20mVまでの分布を持つが、Bi2212やLaを含むBi2201に比べてきわめて小さい。磁場を加えると、10mV付近のピークは減衰し、±20mVを中心としたピークが顕著こなる。この結果から、不均一には2つの原因が関与しており、10mVのピークは超伝導のコヒーレンスピークに起因し、20mV付近のピークが擬ギャップに相当することがわかる。このように、磁場をかけることによって擬ギャップの不均一性だけを取り出すことが可能である。さらに、4×4構造と擬ギャップの関係を調べるために、磁場をかけたデータからフーリエ変換を行ってその周期性を検討した。その結果、5.6a(aは格子常数)に相当する周期的な電子状態の変調をBi2201ではじめて観測した。このことは、長周期の変調がBi2212,Ca_<2-x>Na_xCuO_2Cl_2ばかりでなく、Bi2201にも共通するより一般的な性質であることを意味している。
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