本研究の目的は、高齢者音声の音響的特徴について解析を行い、その音響的特徴を用いて明瞭性を改善することである。まず成人と高齢者音声の特徴として遷移量差を算出し、母音ごとに比較した。その結果、口や舌を大きく動かす/a/や/i/において、遷移量差の絶対値が大きくなることがわかった。次に、F1-F2平面上における5母音の分布を高齢者と成人で比較した。その結果、高齢者音声では分布が小さくなることがわかった。そこで、フォルマント周波数を補正する方法を提案し、明瞭性の改善効果を検証した。聴取実験の結果、フォルマント補正によって口や舌を大きく動かす必要のある単語音声で明瞭性が改善できた。
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