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2012 年度 実施状況報告書

物質本来の強い超伝導を発現させる新奇プロセスの構築

研究課題

研究課題/領域番号 23560801
研究機関九州大学

研究代表者

向田 昌志  九州大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (50302302)

キーワード低酸素圧 / 高速昇温熱処理
研究概要

本研究の目的は、「日本が提案する二酸化炭素などの温室効果ガスを、2020 年までに1990 年比で25% 削減する」計画において、最重要課題である無損失電力線実用化のためのブレークスルーを抽出することにある。高磁場中で200A を超える電流を流せる数ミクロン厚の超電導線が、2025 年の先行開業が決まっているリニア中央新幹線やNMR・MRI 等に用いられてこそ、二酸化炭素(CO2) などの温室効果ガス削減効果が顕著となることから、超伝導電子対の対破壊電流密度からかけ離れて低い現在の臨界電流密度(JC) を向上させる新奇な作製プロセスを導入し、液体窒素温度(-196°C) においても、高磁場中で大電流を流すことのできる超電導線材を開発することを目的とする。これまでの研究結果から、人工ピンニングセンタ材料(例えば、BaZrO3) を添加した超伝導膜を作製すると、超伝導転移温度が劇的に低下することが分かっている。そのため、本研究では、人工ピンニングセンタ材料を入れて磁場中超伝導特性を向上させた膜の超伝導転移温度を、人工ピンニングセンタ材料を入れていない膜と同等の超伝導転移温度まで、戻す、さらに物質本来の「強い超伝導特性」が発現し、対破壊電流密度の25% 以上という高いJC を実現するために、以下の可能性の可否を最初に追求する予定であった。ところが他研究室の学生に、当研究室の装置を壊されるという、予期せぬ事態に直面し、当初計画よりも遅れている状況ではあるが、他研究機関の協力により、実験を進めることができた。今年度は、低酸素圧力内での高速昇温方法を考案し、プロセス温度の低減化を達成した。これにより、基板テープからのNi元素拡散を大幅に低減し、不純物拡散によるJCの低下を防ぐプロセスを構築した。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

3: やや遅れている

理由

他の研究室の学生に壊された装置の修理も、人手不足からままならず、計画よりも遅れている状況であるが、住友電気工業、産業総合研究所の協力を得て、現在よりも低コストな超伝導線材を用いて強い超伝導特性の発現がない原因の究明を行っているところである。具体的には、共同研究を行っている産業総合研究所の山口博士等が開発したFF-Metal Organic Decomposition溶液、住友電気工業が開発しているNiクラッド基材を用いて、FF-MOD熱処理の最適プロセス条件を検討しながら、研究を進めた。膜の評価は、X-線回折法により、配向性、out-growthの検出を行い、微細組織は、共同研究を行っている電力中央研究所の一瀬主幹研究員らと透過電子顕微鏡観察により行った。以上によりこれまでにないプロセス条件での超伝導膜の作製が可能となり、新たな強い超伝導特性を発現できる可能性のある大きな作製領域が広がった。具体的には、低酸素圧力下での高速昇温熱処理法により、超伝導テープ線材を作製した。この超電導線材の断面透過電子顕微鏡観察から、Ni基材テープの酸化が抑えられていること、中間層のクラック発生が抑えられたことを確認した。

今後の研究の推進方策

最終年度は、前年度までに構築した低酸素圧高速昇温プロセスの有効性を示すために、共同研究していた住友電工開発のクラッド基材だけでなく、日本の発明であるIBAD基材上での実証実験を行う予定である。目標とする臨界電流値としては、200A以上であり、それ以上の電流をゼロ抵抗で流すことのできる超伝導テープ線材を実現する。一方で、悪意のある学生が育たないよう、また健全な研究室の活動ができるよう、大学当局に引き続き、働きかけていくとともに、データをねつ造しない、嘘をつかない学生及び職員を育てていく。

次年度の研究費の使用計画

電流輸送特性評価を共同で行ってくれる他大学研究機関への出張測定(900千円)、成果報告としての学会発表に800千円、材料の購入費と装置の維持費として800千円、その他の事務用品で100千円を計画している。

  • 研究成果

    (4件)

すべて 2012

すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件) 学会発表 (2件)

  • [雑誌論文] Flux pinning properties of correlated pinning at low temperatures in ErBCO films with inclined columnar defects2012

    • 著者名/発表者名
      S. Awaji, M. Namba, K. Watanabe, H. Kai, M. Mukaida, S. Okayasu
    • 雑誌名

      J. Appl. Phys.

      巻: 111 ページ: 13914~13917

    • DOI

      10.1063/1.3675181

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Fe-Te-Se epitaxial thin films with enhanced superconducting properties2012

    • 著者名/発表者名
      Paolo Mele, Kaname Matsumoto, Kouhei Fujita, Yutaka Yoshida, Takanobu Kiss, Ataru Ichinose, Masashi Mukaida
    • 雑誌名

      Supercond. Sci. Technol.

      巻: 25 ページ: 8402~

    • DOI

      doi:10.1088/0953-2048/25/8/084021

    • 査読あり
  • [学会発表] FF-MOD法用の低温焼成プロセス2012

    • 著者名/発表者名
      向田昌志、山口巌、一瀬中
    • 学会等名
      応用物理学会
    • 発表場所
      松山大学
    • 年月日
      20120911-20120914
  • [学会発表] Fe-Te-Se エピタキシャル超伝導薄膜の特性制御2012

    • 著者名/発表者名
      算用子将弘,藤田康平,永芳宏昭,松本 要,吉田 隆,一野祐亮,木須隆暢,向田昌志,パオロ メレ,一瀬 中
    • 学会等名
      応用物理学会
    • 発表場所
      松山大学
    • 年月日
      20120911-20120914

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公開日: 2014-07-24  

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