研究課題/領域番号 |
23580092
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研究機関 | 岡山大学 |
研究代表者 |
江崎 文一 岡山大学, 資源植物科学研究所, 准教授 (90243500)
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研究分担者 |
園田 昌司 岡山大学, 資源植物科学研究所, 准教授 (00325127)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | ストレス耐性機構 / イネ科野生植物 / 金属ストレス / 酸化ストレス / 耐性遺伝子 / ストレス誘導性遺伝子 / 遺伝子発現 / 形質転換植物 |
研究概要 |
本研究では上記の多種のストレスに耐性を示すメリケンカルカヤに着目してその有用な耐性機構とそれに関連する遺伝子を解析し、耐性植物を構築することを目的としている。今回はこの植物由来のABC transporter遺伝子とSAMS (S-adenosyl methionine syntase) 遺伝子に焦点を当てて検討するが、新たにイネ科野生植物から、より広範囲な多種ストレスに耐性を示す遺伝子群を単離・解析することも関連する目的として加えている。1. A BC transporter とSAMS遺伝子を高発現するシロイヌナズナ形質転換体の構築を進め、完了した。それぞれについて5系統づつ得られたが、以後の実験には高発現することが確認された3株づつを用いることにした。2. 次にこれらの高発現植物形質転換体での金属ストレスや酸化ストレスに対する感受性試験を実施した。その結果、感受性に差はあるものの両者ともAl、Cu、diamideに対して耐性を示したことから、両者は多くのストレスに耐性を付与できることが示唆された。これはH24 年度実施予定であったが、予定を入れ替えて優先的に実施した。3. 現在、メリケンカルカヤの毒性重金属耐性機構に強く関連すると考えている地上部への金属輸送活性の測定(Al、Cu、Zn、Crの4種)を進めている。Alについての検討の結果、この植物は高い地上部への輸送能力を持つことが示された(移動率38%)。4. 新たに広範囲な多種ストレス(酸化ストレス、Alを含む金属ストレス等)に耐性を示すイネ科野生植物群の選抜を進め、野生種日本型イネ(トウコン)、ヒメタイヌビエ、ムクゲチャヒキなどが得られた。現在、これらの植物が酸化ストレス条件下でどのような蛋白質を産生しているかを2次元電気泳動により解析している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初計画していた内容と比較すると概ね順調に進展していると言えるが、項目によってはその目的遂行のために次年度にずれ込むものもある。その理由としてまず、ABC transporter遺伝子とSAMS遺伝子を高発現するホモザイゴートのArabidopsis 形質転換体の構築が予定よりもずれ込んだことが挙げられる。また多種ストレスに対して耐性を示すイネ科野生植物群の選抜にも、もともと野生植物は発芽に時間がかかることや発芽率が低いため、予想以上に時間を費やしたことが影響したと思われる。ただ、得られたArabidopsis 形質転換体や選抜されたイネ科野生植物についてはこれからの研究の材料として優良な転換体や野生植物が得られたと考えており、今後は研究の進展に大いに貢献するものと思われる。一方、広範囲な多種ストレス(酸化ストレス、Alを含む金属ストレス等)に耐性を示すイネ科野生植物群の選抜については計画以上に進んでいると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
今後の推進方策については大きな変更は今のところ、考えていない。最初の計画に従って進めていく。また、1年目と2年目の研究計画内容に一部入れ替えをしているので、24年度は1年目の未遂行部分から開始していくことになる。また1年目の成果として、SAMS、ABC transporter遺伝子の両者が金属ストレス、酸化ストレス耐性に関与することが明らかとなりつつあるので、その耐性機構についてさらに切り込んだ解析をしていく必要がある。以下が、年間計画である。1. タマネギの表皮細胞を用いてSAMS、ABC transporter遺伝子とGFP遺伝子との融合遺伝子をパーティクルガンで導入し、それらから生産される融合蛋白質の細胞内局在性を確認する。2. シロイヌナズナSAMS高発現株を用いてマイクロアレイ法によりAlを始めとするストレスで発現量が変化した遺伝子群の特定を行い、耐性機構との関連を網羅的に探る。3. ABC transporter遺伝子高発現株を用いて、AlやCuストレス下でのこれらの金属イオンの根から、地上部への移動率を非形質転換植物体と比較し、移動にABC transporterが関与しているかを検討する。4. 酸化ストレス、Alを含む金属ストレス等に耐性を示すイネ科野生植物3種類についてのプロテオミクス解析をさらに行う。
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次年度の研究費の使用計画 |
H24 年度の研究費はこれらの計画を踏まえて適切に使用する予定である。まず主な研究関連の消耗品類としては、以下の2点である。ABC transporterやSAMS蛋白質とGFPとの融合遺伝子を作成し、それらの蛋白質の細胞内局在性を検討する実験では遺伝子操作関連酵素やキットの購入が必要である。マイクロアレイ法でSAMS高発現株と非形質転換体株(コントロール株)の間で、発現量に違いが見られる遺伝子群が確認できるかを検討するが、マイクロアレイ操作に必要な市販のアレイプレートや試薬キットの購入を計画している。またH24年度も研究補助に対する謝金も計画している。H23年度は2か月分約33万円を計上したが、H24年度も同額の2か月分約33万円を考えている。なおH24年度は備品類の購入計画はない。
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