研究課題/領域番号 |
23580092
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研究機関 | 岡山大学 |
研究代表者 |
江崎 文一 岡山大学, 資源植物科学研究所, 准教授 (90243500)
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研究分担者 |
園田 昌司 岡山大学, 資源植物科学研究所, 准教授 (00325127)
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キーワード | イネ科有用野生植物 / SAMS遺伝子 / ABC transporter 遺伝子 / ストレス耐性機構 / アルミニウムストレス / epigenetics / 遺伝子発現調節 / メリケンカルカヤ |
研究概要 |
【ABC transporter高発現植物形質転換体は金属ストレスや酸化ストレスに耐性か?】 メリケンカルカヤのABC transporterが金属毒性耐性に関連するかを、高発現株を用いた感受性試験で検討した。Al、Cu、diamideに耐性だったことから、耐性遺伝子であることがわかった。 【ABC transporter高発現株の金属輸送活性の測定】 Alストレス処理後に根、地上部で分別した後、原子吸光法で含有量を測定し、この蛋白質がAlの地上部輸送に関連するかを検討したが、輸送そのものとの関係は見られなかった。そこでAl処理した根の中のAl局在部位を顕微鏡観察したところ、ABC transporter蛋白が局在する皮層細胞部分に集積していた。このことからAlの根組織内での集積にこの蛋白質が関連することが示唆された。 【SAMS遺伝子のストレス耐性機構に関する解析】 今回はSAMS高発現形質転換株についても金属ストレスや参加ストレスに対する感受性試験を行い、耐性機構との関わりを検討した。その結果、Al、Cu、Zn、diamideに広く耐性を示した。 【SAMS遺伝子のepigeneticな遺伝子発現調節への関与に関する解析】 構築したSAMS高発現株を用いて、epigeneticsとAl耐性機構との関連を探るために、Alストレスによる遺伝子発現変動の網羅的解析をマイクロアレイ法で行った。その結果、SAMS高発現株は非形質転換株に比べて、ストレス特異的に多くの遺伝子の発現に変化見られた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
項目によっては、少し遅れ気味のものもあるが、全体的には順調であると判断される。また、残り1年となったが、この期間内に当初の研究計画を概ね達成できる目途が立ってきたと判断されるため。
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今後の研究の推進方策 |
1) SAMS遺伝子のストレス耐性機構に関する解析の続き これまでの研究の結果、SAMS過剰発現株ではAlストレス下でepigeneticな制御と思われる大規模な遺伝子発現変動が起こることが示唆された。これは染色体DNAのメチル化に起因する可能性がある。この点を明らかにするために、特に発現量が変化した遺伝子群に注目してその遺伝子領域におけるAl処理下でのDNAメチル化の状況を検討する。このような解析を通して、SAMS遺伝子とepigenetics、Al耐性機構との関連について最終的にまとめていく。 2) ABC transporterとSAMS遺伝子は他のイネ科植物では同様の機能を持つのか? 既にススキやヒエなどのイネ科野生植物がAlストレスや酸化ストレス耐性であることを明らかにしている。一方、メリケンカルカヤにはこれらの植物にはない新たなAl耐性機構があることも明らかにした。そこでメリケンカルカヤ以外の植物でのABC transporterとSAMSとの相同性のある遺伝子の有無やそれらのストレス下での発現パターンをメリケンカルカヤの場合と比較し、2つの遺伝子のAl耐性機構での役割を別の方向から検討する。
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次年度の研究費の使用計画 |
消耗品の購入、研究支援員への謝金を中心に使用する予定で、当初の計画で最終年度も適切に賄えると考えている。なお、研究備品等の購入等は予定していない。
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