研究課題/領域番号 |
23580232
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研究機関 | 秋田県立大学 |
研究代表者 |
山内 秀文 秋田県立大学, 付置研究所, 准教授 (90279513)
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キーワード | 木質マイクロプライ / 微量接着 / 微量塗布 / 木質積層材料 |
研究概要 |
2012年度は、2011年度の検討に基づき、引き続き材料作製・性能評価実験を行うとともに、今後の実用化に向けた技術検討を開始し以下の結果を得た。 ・接着層にかかるせん断応力が大きくなる1.0mm条件で3ply合板構成材料を作製し、4時間煮沸による接着耐久性試験を行い、1接着層あたり6g/m2の塗布量でも煮沸に十分耐える性能が得られることを明らかにするとともに、・接着剤に天然系のクエン酸やスクロース・タンニンを用いることで、非石油系の材料のみでもPF使用時と同様の薄層材料が得られることを明らかにした。 ・スギの0.3mm厚ロータリー単板を用い、積層構成による材料性能の変化を検討した。LVL構成(完全配向)とすることで、5ply・密度0.5g/cm3で繊維方向平行100MPaの性能が得られることが明らかになった。 また、合板構成においても、積層数を増やすことで繊維方向・繊維直交方向の性能差を小さくできることが示唆された。 ・より大きな材料の製造実験を行えるよう、電子制御のXYアクチュエーターを用いた、大判の自動塗布装置の設計を開始した。25年度の冒頭にも製作予定 ・樹脂との複合化について検討を始め、ウレタン樹脂を用いた射出成形によって複合材料モデルを作製し、製品における25-30%の軽量化、1/3-2/3の樹脂量低減とともに、ねじれ剛性が大幅に向上した製品が得られることが明らかになった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度は、昨年度から検討していた薄層材料の特許出願を行った。さらに、昨年度に引き続き、積層構成による性能差を明らかにするなど、当初計画に盛った24年度以降の研究課題を順調に消化してきている。また、外部研究者とのディスカッションの結果から、天然系接着剤を用いた材料製造技術にも挑戦し、十分実用可能な学術的・技術的結果が得られた。さらに、25年度の研究開始前に薄層積層材料の樹脂との複合モデルの作製を成功させ、それの持つポテンシャルを実感できた。この新しい材料に関しては、早々に特許申請するべく、内部で検討を進めている。以上の結果から、研究は予想を超える部分を包含しながら、順調に進んでいる。
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今後の研究の推進方策 |
25年度は、これまでより大きな材料試験体が作製できる塗布装置を早々に管制させ、過去の文献などが参照可能となる実用的・実践的な材料実験を行う。また、樹脂複合材料の実用化に向けた基礎的研究として、ポリプロピレンや塩ビなどの低極性汎用樹脂との複合化に向けた薄層積層材料の処理方法を検討し、木質・樹脂接合技術の基礎技術の確立を目指す。
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次年度の研究費の使用計画 |
今年度は、より大判の試験体作製が可能な塗布装置を作製する。装置については、基本的には各要素部品を個々に調達し、研究者がアッセンブルする方法を考えており、この部品調達に伴うもの、および接着剤等実験遂行に必要な消耗品費および多少の委託費を計上することとしたい。また、昨年度と同様以上に単純作業やルーチンワークか多くなることか予想されることから、この作業 を補助するアルハイトを雇用するための人件費を計上する。 また、成果の取りまとめ・発表に要する旅費をやや多めに計上する計画にしている。
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