研究課題/領域番号 |
23580249
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研究機関 | 東京海洋大学 |
研究代表者 |
舞田 正志 東京海洋大学, 海洋科学技術研究科, 教授 (60238839)
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キーワード | メタボロミクス / 動物福祉 / ストレス / 評価法 |
研究概要 |
平成24年度は、ティラピアのストレス状態を血漿化学成分の多変量解析を用いて把握すること及びストレス負荷中のエネルギー代謝においては、糖質、アミノ酸、脂質の代謝相関に注目する必要があると考え、血漿遊離アミノ酸組成を定量解析することによって、ストレス負荷時の代謝変化を捉えることを目的として研究を行った。 前年度、17項目の血漿化学成分を対照魚とストレス魚で比較すると、ストレス指標となるコルチゾールの上昇は見られないにも関わらず、電解質及び血漿浸透圧の低下が見られることが明らかになった。これに付随する変動として血漿グルコースの上昇が見られるはずであるが、1週間の高密度飼育では有意に上昇したが、2週間の高密度飼育では逆に有意に低下しており一般的な変動とは異なることを明らかにした。これを受けて、魚のストレス状態を把握するために、対照魚とストレス魚で血漿化学成分の多変量解析を行ったところ、対照魚とストレス魚の分布が異なり、血漿化学成分の多変量解析を用いたパターン解析によりストレス状態を把握することができることが示唆された。また、このパターン解析はストレス状態の進行度をも把握できる可能性がある。さらに、血漿中の無機リン、マグネシウム、ナトリウム及びカリウム濃度を用いた非ストレス魚を判別可能な判別式を明らかにすることができた。 高密度飼育ストレスを負荷された魚では血漿中の遊離アミノ酸含量が有意に増加した。血漿中の遊離アミノ酸分析の結果、ストレス魚ではアスパラギン酸、スレオニン、イソロイシン及びロイシンの有意な上昇とグルタミン酸の著しい減少が見られた。肝臓中のALP活性には有意な上昇が見られたが、ASTにストレスによる変動は見られなかった。このことから、アミノ酸をエネルギー源として使用する際の特徴的な変動の一端をとらえることができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初研究計画と比較し、ほぼ、研究計画通りに研究を遂行し、ほぼ予測通りの結果が得られている。
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今後の研究の推進方策 |
平成24年度までの研究実績は、ほぼ当初の研究計画通りに進んでおり、得られた結果も当初想定された結果と大きく異なるものではない。そこで、当初計画した研究計画通り研究を実施する。 すなわち、メタボロミクス解析による代謝変動と血漿成分の変化に関連性を示唆する結果が見い出されたため、養殖魚のストレス状態をより的確に把握しうる指標を決定し、魚種を変えて、その妥当性の検証実験を行う。さらに、溶存酸素量や水温など二次的な環境要因が及ぼす影響を調べ、ストレス状態を評価する各指標の感度、精度を比較検討する。
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次年度の研究費の使用計画 |
該当なし
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