研究課題/領域番号 |
23590123
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研究機関 | 神戸薬科大学 |
研究代表者 |
江本 憲昭 神戸薬科大学, 薬学部, 教授 (30294218)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | エンドセリン / エンドセリン変換酵素 / ブラジキニン / ナトリウム利尿ペプチド / 肺高血圧症 / 遺伝子欠損マウス |
研究概要 |
本研究では、心血管系疾患の病態進展に重要な役割を果たすエンドセリン(ET)系、ブラジキニン(BK)系、利尿ペプチド(NP)系、レニン・アンジオテンシン(RAS)系といった循環調節ペプチド系を互いに連関するネットワークとして包括的に制御する新たな治療戦略を確立することを目的とするものである。具体的には、これらのペプチドネットワークに対して広範な基質特異性を保持しているエンドセリン変換酵素(ECE)を阻害するというアプローチが、どのような影響を及ぼし病態を改善するかを、肺高血圧症をモデルとして検証し、最終的には本研究の成果により、臨床現場にECE阻害という新たな治療戦略の可能性を提案する。 当該年度に、私たちはECE遺伝子欠損マウスで低酸素誘導性肺高血圧症モデルを作製し、野生型マウスと比較して、肺動脈圧の上昇および右心負荷が有意に抑制されることを観血的圧測定法にて確認した。組織学的検討では、肺動脈リモデリングおよび右心室の心筋肥大がECE遺伝子欠損マウスで有意に抑制されていた。これらの差異を定量・スコア化することで統計的な解析を行った。さらにエンドセリン濃度を測定したところ予想外にも血中および組織中のエンドセリン濃度はECE遺伝子欠損マウスと野生型マウスの間で有意な差を認めなかった。 以上より、ECE遺伝子欠損マウス低酸素誘発性の肺高血圧症の発症抑制はエンドセリン産生の抑制によるものではなく、異なる分子機序によるものであることが示唆された。 この分子機序を明らかにすることで肺高血圧症発症におけるECEの役割について新たな知見を得ると同時にECE阻害薬の臨床的有効性を示すことが期待される。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
ECE遺伝子欠損マウスと野生型マウスとの間でエンドセリン濃度に差異を認めなかったことは予想外の結果であり、その表現型の確認に時間を費やした。そのため、予定していた循環調節ペプチドのプロファイル解析のうちの一部が平成24年度にずれこむことになった。 しかしながら、循環調節ペプチドプロファイルの解析法は私たちの研究室で確立しており、平成24年度中には当初の計画通りに達成できることを確信する。
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今後の研究の推進方策 |
遺伝子改変マウスの解析過程で予期せぬ表現型を見いだしたため、当初平成23年度に予定されていた計画の一部は平成24年度に実施される予定である。その研究を遂行するための研究費は平成23年度での未使用分を予定している。 まず循環調節ペプチドのプロファイルの解析として、ECE-1+/-マウスにおいて、肺高血圧症をきたした状態で生体内の循環調節ペプチドを定量することによりECE-1による循環調節ペプチドの代謝を調べる。次に各種阻害薬を用いた検証実験として、各循環調節ペプチド系に対する特異的な受容体拮抗薬や阻害薬を用いてECE阻害による表現型はどの系によって影響を受けているのかを生体で検証する。
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次年度の研究費の使用計画 |
研究費は主として消耗品に使用される。具体的には、免疫組織化学用抗体、免疫酵素法解析キット、定量的PCR試薬、マウス遺伝子型検索試薬などである。 また、各種循環ペプチド系に生体で作用する特異的な受容体拮抗薬や阻害薬の購入も必要となる。 さらにマウスの維持・管理に関わる諸費用にも使用予定である。
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