研究課題/領域番号 |
23590156
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研究機関 | 北陸大学 |
研究代表者 |
山本 千夏 北陸大学, 薬学部, 准教授 (70230571)
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キーワード | ビスマス / アンチモン / ハイブリッド分子 / 有機金属化合物 / 毒性 / 内皮細胞 / ジーントラップ法 |
研究概要 |
平成24年度では以下の成果を得た。 1.細胞内への蓄積性:ウシ大動脈内皮細胞だけでなく,ウシ大動脈平滑筋細胞,ヒト胎児肺由来IMR-90線維芽細胞,およびブタ腎由来LLC-PK1上皮細胞についても有機ビスマス/アンチモン化合物に対する細胞毒性を調べたところ,スマスを導入した場合は毒性を示すがアンチモンを導入した場合では毒性を示さなかった(PMTABiおよびPMTASならびにDAPBiおよびDAPSb)。そこで,これらの細胞種についても,有機ビスマス/アンチモン化合物の細胞内蓄積量をICP/MSを用いてビスマスおよびアンチモン量として測定したところ,有機ビスマス化合物であるPMTABiおよびDAPBiは細胞内に高く蓄積したが,有機アンチモン化合物であるPMTASおよびDAPSbの蓄積はわずかであり,内皮細胞と同様の結果を得た。すなわち,細胞種が異なっても細胞内への蓄積が毒性の強さを決定する有力な要因の1つであることが示唆された。 2.DNAマイクロアレイによる遺伝子発現の網羅的解析:有機ビスマス/アンチモン化合物に曝露したヒト冠動脈内皮細胞についてDNAマイクロアレイによる網羅的遺伝子解析を行った結果,DAPBiとPMTABiは共通して,p57Kip2など約1,000遺伝子が発現上昇し,CDK1など約700遺伝子が発現低下していた。 3.ジーントラップ挿入変異細胞ライブラリーを用いた解析:ジーントラップ挿入変異細胞ライブラリーからPMTASに対しては抵抗性を示すが,PMTABiに対しては感受性である細胞のクローニングを行い,現時点で75のCHO-RPB1細胞の単離・獲得に成功した。樹立したPMTABi耐性RPB-1細胞系はDAPBiにも交差耐性を示すことが分かった。PMTABi耐性細胞から,有機ビスマス化合物耐性責任候補遺伝子の1つとして,LMNA遺伝子が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
クローニングに時間はかかったが,それ以外の実験に関しては,ほぼ予定通り進行している。
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今後の研究の推進方策 |
平成25年度の予定通り研究計画にしたがって進める。 1.毒性発現を担い得る責任遺伝子の探索:LMNA遺伝子以外にも責任遺伝子の存在の可能性があるので、さらにクローニングを行い,耐性細胞から有機ビスマス化合物耐性責任候補遺伝子を探索する。見いだされた遺伝子を高発現させ,あるいはRNA干渉法でノックダウンさせ有機ビスマス/アンチモン化合物に対する感受性を調べる。 2.有機ビスマス化合物の毒性評価系の構築:以上の検討によって同定した有機ビスマスの選択的分子標的の遺伝子を高発現したCHO細胞を作製する。この細胞を申請者らが有する有機ビスマスライブラリー(約50化合物)の毒性評価に適用し最も優れた毒性評価系を構築する。 3.有機ビスマス化合物の毒性評価スキームの確立:以上の検討を通じて,有機ビスマスの毒性評価スキームの確立を試みる。
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次年度の研究費の使用計画 |
クローニンに時間がかかったので,高額な試薬類の購入回数が少なかったた研究費の使用が若干遅れた。 今年度の研究は,遺伝子のsiRNAや遺伝子導入など試薬類の購入が増えると予想される。上記の実験に必要な消耗品および研究成果発表に必要な旅費や論文校閲料等に使用する。
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