平成25年度はこれまでに引き続き,毒性発現を担う責任遺伝子の探索を行った。CHO-GT細胞を有機ビスマス化合物(PMTABi,TDPB,DAPBi)で処理し,感受性の低下した細胞を97クローン獲得した。5’RACE法にて感受性低下細胞においてトラップ(破壊)された遺伝子を増幅し,感受性低下を担う候補遺伝子を同定した。これまでのLMNAの他に,TNS1,PPARγ,Adapt15,CD34,Zfp280c,LOC100762940,KIF4,Eno2などの候補遺伝子を見出すことに成功した。現在これらの遺伝子の発現をノックダウンすることで責任遺伝子を検討中である。 上記の97クローンよりPMTABiに対する感受性低下細胞を3株樹立した。この感受性低下細胞について,その感受性の低下と細胞内蓄積量の関係について検討したところ,親株であるCHO-GT細胞に比べ,いずれの感受性低下細胞においてもPMTABiの細胞内蓄積量は増加していた。従って,感受性の低下は,有機ビスマス化合物の細胞内への蓄積の低下によるのではなく,細胞内での代謝あるいはそれを含む防御機構の変化に起因することが推測された。 有機ビスマス化合物は有機アンチモン化合物に比べ顕著に細胞内に蓄積しやすく,同じ分子構造であるにもかかわらず導入金属がビスマスからアンチモンに置換されることによって細胞内に蓄積しなくなる。このメカニズムの同定には至らなかったが,今後,感受性低下細胞を多く樹立していくことで解決できると思われる。
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