研究課題/領域番号 |
23590363
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
村上 良子 大阪大学, 微生物病研究所, 准教授 (00304048)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | GPIアンカー / 高アルカリフォスファターゼ血症 / てんかん |
研究概要 |
我々は、他のグループとの共同研究によって責任遺伝子をそれぞれPIGM,PIGVとする2種の先天性GPI欠損症の解析に係わった。PIGM欠損症の2家系では難治性てんかんと門脈血栓症が主症状で、PIGV欠損症の4家系では高アルカリフォスファターゼ血症・精神発達障害・てんかん発作が主症状であった。先天性PIGV欠損症における高アルカリファオスファターゼ血症の発症機序について解析した。GPIアンカー型蛋白である胎盤型アルカリフォスファターゼ(PLAP)をレポーターとしてPIGV欠損あるいは他のステップの遺伝子欠損CHO細胞に発現させ活性測定により、培養液中の遊離を解析した。また培養上清中のPLAPを精製しその切断部位を質量分析で解析した。その結果、アルカリフォスファターゼの遊離にはタンパク質C末端のGPIアンカー付加シグナルを切断し、GPIアンカーと置き換えるGPIトランスアミダーゼが働くことが明らかになった。すなわちGPIアンカー欠損下ではPLAPのタンパク部分がそのωサイトでGPIトランスアミダーゼによって切断されるものの、GPIが付加されないために一部が培養液中に遊離されることが明らかになった。培養液中への遊離はマンノースを含むGPI中間体が蓄積するPIGV以降の後期のGPI生合成遺伝子の欠損で、効率よく起こり、トランスアミダーゼの欠損株では全く起こらなかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
先天性PIGV欠損症における高ALP血症についてその機序を明らかにすると共に、他のGPI生合成遺伝子の欠損においても同様の結果がえられることを実験的に証明し、新しい先天性GPI欠損症がみつかる可能性を予見した。以上の結果を論文にまとめて発表した。
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今後の研究の推進方策 |
先天性GPI欠損症に共通するてんかん発作の発症機序について解析する。先天性低アルカリフォスファターゼ血症という組織非特異的アルカリフォスファターゼ遺伝子(TNAP)変異に起因する疾患があり、同様に重篤なてんかん発作が見られる。脳の神経細胞では血清中のpyridoxal phosphate(PLP)が細胞膜上のTNAPの働きで脱リン酸化されてpyrodoxal(PL)となり細胞膜を通過し再び細胞内でpyridoxal kinaseによってリン酸化されてPLPとなる。細胞内のPLPは様々な酵素の補酵素として働くが、それらの酵素の一つにGABAの生合成を担うglutamate decarboxylase(GAD)がある。即ちTNAP欠損により細胞内PLPが減少しGABA濃度が低下することにより抑制性シグナルが低下する結果、神経細胞の過興奮が起こって痙攣発作に至る。実際PLの腹腔内投与でTNAP KOマウスの痙攣発作は改善する(Nat Genet.1995,11:45)。TNAPはGPIアンカー型蛋白なので、先天性GPI欠損症においても同様の機序で痙攣発作が起こっている可能性がある。これを患者の解析とモデルマウスを使った解析で検証する。また本年度の結果より、新しい先天性GPI欠損症の患者が見つかる可能性があることが明らかになり疾患概念を確立させるために患者のスクリーニングをする予定にしている。
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次年度の研究費の使用計画 |
物品費 50万円旅費 40万円その他(動物実験費用)60万円
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