平成25年度は次の実績が得られた。 これまでに、GD3発現(GD3(+))ヒトメラノーマ細胞(GD3(+)細胞)とGD3非発現コントロール細胞(GD3(-)細胞)において、HGF-Metの単独刺激では、GD3(+)細胞とGD3(-)細胞の間でAktおよびErkのリン酸化レベルの明らかな差異は認められないが、これにCL-Iに対する接着刺激を同時に加えることにより、GD(+)細胞のAktとErkのリン酸化レベルが著明に増強することを示してきた。今年度は、GD3発現ヒトメラノーマ細胞株SK-MEL-28にGD3合成酵素遺伝子のshRNAを導入して本酵素遺伝子をノックダンしたGD3抑制細胞を用い、GD3抑制細胞では、HGFとCL-Iによる同時刺激を与えてもAktおよびErkのリン酸化の増強が認められないことを示した。更に、GD3(+)細胞およびGD3(-)細胞に抗GD3モノクローナル抗体(R24 mAb)を反応させた後、HGFとCL-Iによる同時刺激を加えた場合、GD3(+)細胞においては、R24 mAbによりAktおよびErkのリン酸化レベルが抑制されることも示した。 また、GD3(+)細胞について、細胞膜のGD3近傍の分子群をEMARS反応により解析した結果、Neogeninが同定され、γ-secretaseによりNeogenin のcleavageが増加することが明らかになった。一方、Neogenin がGD3と結合することも生化学的に示した。更に、Neogeninを強発現させた細胞では浸潤性の亢進も認められ、Neogeninは細胞膜上でGD3と相互作用し、細胞の浸潤性に関与するものと推察された。cleavage されたNeogeninの細胞内ドメイン(NeICD)は転写因子として機能するので、今後、メラノーマにおけるNeICDの標的遺伝子の同定を行う。
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