研究概要 |
我々は、これまでに、マウスに対して致死性のインフルエンザAウイルスを感染させると、肺胞上皮細胞に著しくアポトーシスが誘導されること、また、アポトーシス誘導シグナルにDAP3(Nat.Immunol.2001,JBC 2004,FASEB J.2007)が重要であることを明らかにした。 さらに、ウイルス感染後のインターフェロン誘導に重要なIPS-1 にDAP3が会合し、アポトーシス誘導に重要であることを示した(Cell Death and Differ.2009)。その後、インフルエンザウイルスのポリメラーゼPB2がIPS-1に会合しインターフェロン産生経路を特異的に阻害することを発見した(JBC 2010)。 最近、ウイルスのPB2に会合する宿主因子としてSIVA1を同定し、ウイルス感染後のアポトーシス誘導に重要であることを明らかにした(JGV 2011)。また、RIG-Iに会合しインターフェロン誘導に関わる新規分子ZAPSを同定し、ウイルス増殖抑制に重要であることを明らかにした(Nat.Immunol.2011)。 今回、我々は、インフルエンザウイルス感染後、肺細胞にアポトーシスを誘導するFasL分子が著しく誘導されることを見出した。また、FasL変異マウスでは、ウイルス感染後の生存率が上昇することを明らかにし、これらの分子が病態形成に関与していることを示した。加えて、Fas/FasLシグナルの阻害剤の投与はウイルス感染後の病態の重篤化を抑制し、マウス生存率を上昇させた。また、ウイルス感染により産生されるタイプIインターフェロンが肺中の細胞のFasL発現誘導に重要であり、インターフェロンの産生調節とFasシグナルの阻害が効果的なインフルエンザ治療を可能とすることが期待される。
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