RFIDの病院への応用は、医療機器管理や患者の追跡に有用と考えられてきた。しかしながら、RFID技術の潜在的可能性はより高く、病院スタッフに適用することで、病院マネジメントに有効なデータを収集、活用できると考えられる。本研究では、看護師を中心とした病棟スタッフ及び病棟の機器(心電計等)に、RFIDによる位置追跡確認機能を持たせて、業務時の位置と時刻のデータを収集して、病棟業務状況の分析、病棟運営に有用な情報の抽出の実証を行った。 各病室の看護師訪問頻度・滞在時間の結果を得た。さらに、病室の訪問回数、訪問時間の合計、平均訪問時間を算出して、病室毎の訪問状況を可視化したナース・ステーションから最も遠い病室(軽症患者を配置)では、訪問回数・訪問時間合計はより重症患者がいる部屋より少ない。しかし一訪問あたりの滞在時間は長かった。 重症患者用病室(ナース・ステーションから最も近い)の業務頻度、業務時間が最も高かった。 病棟には3台の心電計があり、1台が新しい(使いやすい)機器だった。その新しい機器だけが利用頻度が高く、他の機器はナース・ステーションのそばにずっとおいたままであった。医療機器に対してRFIDを活用する場合、どこで利用中か、管理台帳として用いるニーズがあり、その利用実態まで明らかにできた。 看護実施状況を定量的に捉えることが可能になり、看護配置や看護必要度を定量的に評価する可能性が開けた。インシデントが発生した場合に、その時間帯の看護師の配置を表して、「他病室に業務が集中か」、「巡回間隔が不足したか」、などの要因絞り込みが可能になる。看護師の業務負荷、医療安全への活用などが期待される。
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