研究課題/領域番号 |
23590599
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研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
森川 富昭 慶應義塾大学, 政策・メディア研究科, 准教授 (30274244)
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キーワード | PHR / ICT / 健康管理 / 糖尿病 |
研究概要 |
本研究では,健常者及び糖尿病予備群に対する効果的な1次予防法の提供を目的とし, ICTを活用した健康情報収集・分析システムを開発・運用し,体重や血圧,歩数等の健康データを見える化することで,参加者の行動変容が起きるかの検証を行う. FeliCa機能付き歩数計を個人認証に用いた健康管理システムの構築により,個人は歩数計さえ持っていれば簡単に身体計測データが登録でき,日頃の健康管理を簡単に実施することが可能となった.施設や利用者がより参加しやすくすることで,利用施設・利用者の増加を目指した.その結果,利用施設は7施設から15施設へ,利用者は196名から701名へと増加した. しかしながら,現在のシステムで利用できる健康機器は限定されており,体組成計や血圧計を備えた測定箇所は限られていた.この点を解決するため,健康機器接続の標準規格のガイドライン(CHA:Continua Health Alliance)へのシステム対応を行った.これにより複数メーカーの体組成計,血圧計に接続可能になったため,一般家庭等での体組成,血圧計測も視野に入った.また,更なる健康情報収集・分析のために,特定健診データを収集する機能の追加及び血糖測定器の血糖値データの登録機能追加も行った. また,平成23年度に収集した健康情報(36名)に対して,参加者の行動変容に関する分析を実施した.実施期間中の利用者の歩数計計測の継続期間を調査すると,期間が経つにつれて計測者の数が減少し,歩数計の計測が1年間継続したのは15名(41.7%)であることがわかった.登録された歩数のデータを分析すると,システムで健康管理を行うことで開始当初は個人が健康改善に向けて行動変容が起き,歩数が増加するが,半年で健康改善の意識が下がり,歩数が登録当初と同じ数に戻ることがわかった.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
H24年度では当初の計画通りシステムのCHA対応,特定健診データ及び血糖値データの登録機能追加を行った.また,参加者の行動変容に関する分析を実施し,実際の行動変容の経過を明らかにすることが出来た.この結果により,行動変容を定着させるには,健康管理のための健康改善の意識継続が必要であり,その為には定期的な介入が必要であることが明らかになった.また,行動変容への効果検証の為には600~800名程度の集団が必要であるが,Felica対応,CHA対応等により充分な参加者を確保する事が出来た.
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今後の研究の推進方策 |
システムで健康管理を行うことで開始当初は個人が健康改善に向けて行動変容が起き,歩数が増加するが,半年で健康改善の意識が下がり,歩数が登録当初と同じ数に戻ることがわかった.そのため,健康情報の分析結果を元に,半年~3ヶ月程度を目安に健康改善継続の指導することが必要であると考える. H25年度は,半年ごとに利用者へ介入を行う仕組みなど,健康改善に向けて行動変容が継続する仕組みの構築検討及び,介入効果の検証を行う.これには,特定健診等,より自己の健康状態の把握にインパクトのあるデータの活用も検討する.また,利用者の継続性確保,拡大にはシステムへの容易なアクセスが重要であるため,タッチパネル端末,スマートフォン等のユーザ親和性が高いインターフェースを持つ普及済みデバイスへのシステムの適応を行う予定である. さらに,見える化による健康管理の仕組みを疾病管理へ応用することを検討する.具体的には,糖尿病患者を対象とし,血糖値の見える化による患者の意識改善,疾病管理支援への有効性を検討する.
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次年度の研究費の使用計画 |
利用者の健康管理に対する定期的な介入のためユーザ親和性の高いツールとしてのタッチパネル端末及びスマートフォン等のデバイスを,健康情報収集・分析システム適応のために購入予定.また、シンガポールへICTを活用したPHRの実地調査のため渡航予定. 尚,支払請求書には直接経費の平成24年度未使用見込額を0円と入力し提出したものの,シンガポールへのPHR実地調査を延期したため年度内に使い切ることができず差額544,936円につき本年度に繰り越しを希望します.
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