研究課題/領域番号 |
23590649
|
研究機関 | 東京慈恵会医科大学 |
研究代表者 |
岩本 武夫 東京慈恵会医科大学, 医学部, 准教授 (90568891)
|
研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
|
キーワード | 合成ペプチド / 新規ベクター / ファブリー病 / 遺伝子治療 |
研究概要 |
23年度は震災の後遺症による電力不足から、思うように実験は進まなかった。まず最初に実験材料となるナノベシクルを構成する新規にデザインした分枝両親媒性ペプチドの合成を試みた。しかし空調の悪化に伴い特に湿度に敏感な化学反応の収率は低下し、ペプチド合成に関しては多大な影響を受けた。そのため、研究環境の改善が見込める湿度の低い冬よりペプチドの合成を開始した。このため研究実施計画の変更を行い夏場には24年度に計画していたファブリー病遺伝子治療成果の検証に必要な診断マーカーGL3定量分析手法の開発を前倒しして行った。その結果LC-MS/MSを用いたMRM法により組織や尿中の診断マーカーGL3の経時変化を追うことが可能となった。今後の動物実験におけるファブリー病の遺伝子治療効果の評価に役立つ手法となった。ファブリー病はα-ガラクトシダーゼAの遺伝子異常によるα-ガラクトシダーゼA酵素活性の欠損または低下が原因であるため、遺伝子治療は有効な手段である。しかし有効な手段にするためには研究目的の遺伝子導入率の向上と従来法より安全性の高い遺伝子治療法を開発する必要がある。この目的のために治療用遺伝子としてeGFPとα-ガラクトシダーゼAとのハイブリット型治療用遺伝子cDNAプラスミドを調整した。この遺伝子が機能するかどうか293A細胞株のGFPの蛍光測定と4MU基質の酵素活性測定により、作成したハイブリットプラスミドが機能することを確認した。この結果より、調製したハイブリットプラスミドはファブリー病の治療用遺伝子として使用可能であることが判明した。パイロット的に様々なナノベシクルを形成する分枝両親媒性ペプチドの合成を固相合成法により開始した。合成した粗ペプチドをHPLCで精製し、質量分析器でそのシークエンスや質量などの特性評価を行った。デザインどうりのペプチドが合成できたことを確証した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
震災の影響による夏場の電力不足から研究環境が低下し、実験材料であるペプチドの合成に影響を及ぼした。そのため初年度の実験計画変更を行い、24年度に計画しているファブリー病遺伝子治療成果の検証に必要な診断マーカーGL3の定量分析手法の開発を前倒して検討した。そのため当初の研究目的1)治療用遺伝子導入率の向上に関する検討や多価イオンが及ぼす細胞毒性の検討が遅れている。しかし3年間のプロジェクトとして捉えれば、時間配分としてはおおむね順調に進展している。
|
今後の研究の推進方策 |
治療用遺伝子導入率の向上に関する検討が遅れているため、24年度は、導入効率の向上を図るために、Tatエピトープを修飾したナノベシクルベクターの最適な調整法の確立と導入効率とその条件による細胞毒性の検討を行う。そのためナノベシクルを形成するペプチドの一年中を通し安定に合成できることが必須である。今後も電力供給の悪化に伴う研究環境の低下が起こり得る可能性がある。そのため研究協力者であるKansas州立大学のTomich教授の下で、ペプチド合成を自身が行うか合成委託の依頼を行う予定である。
|
次年度の研究費の使用計画 |
23年度は震災の後遺症で予定していた学会などのキャンセルのため、旅費は使うことがなかった。またペプチド合成も十分に行える研究環境ではなかったため、最少量のパイロットバッチでの合成となったため、新規の試薬などの購入は必要なかった。24年度はペプチドの合成に関して、合成スケールを拡大して、自分自身がKansas州立大学で合成もしくは、合成委託の依頼を行う予定のため、23年度の繰り越し研究費はこれに充てる予定である。研究協力者であるKansas州立大学のTomich教授との研究打ち合わせを行うため、日本への渡航費用として使用する予定である。
|