研究課題/領域番号 |
23590649
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研究機関 | 東京慈恵会医科大学 |
研究代表者 |
岩本 武夫 東京慈恵会医科大学, 医学部, 准教授 (90568891)
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キーワード | 合成ペプチド / 新規ベクター / ファブリー病 / 遺伝子治療 |
研究概要 |
昨年度導入率を最適化した条件でベクター(α-ガラクトシダーゼ+γGFP)にペプチドh5とh9を当量ずつ加え作成したナノペプチドベシクルを293A培養細胞株に加えその発現をフローサイトメトリーで確認した。また酵素活性は4-MU蛍光試薬をラベルした基質を用いて計測した。その結果、コントロール群に比べナノベシクルベクター投与群の酵素活性は上昇を示し、明らかにペプチドベクター投与による遺伝子治療が機能していることを確認した。しかし酵素の発現率が低値であるため動物実験の移行は無意味と判断し、遺伝子導入率のさらなる向上策について検討を行った。ペプチドナノサイズカプセルの大半は160 nmのベシクルであるが、時間の経過とともにベシクル同士が融合を繰り返し、nmからμmレンジへとサイズが変化していくことを観察した。このためによる細胞への取り込みや発現率の低下などが疑われた。そこで脂質リポソームの場合にサイズをコントロールするために使用する穴の大きさが違うポリカーボネートフィルターを用いてサイズのコントロールを検討した。その結果カプセルを100 nmや30 nmのフィルターに通すことで直径20~60 nmや20~30 nmのサイズに変えることが可能と成った。2mMの蛍光試薬eosinYを包み込んだペプチドカプセルを用いて洗浄操作やカプセルの融合挙動について蛍光測定により検討を行った。その結果4℃で保存すればカプセル同士の融合は起きず安定した状態でナノスケールサイズを保持することが分かった。またこのeosinY溶液を包み込んだカプセルは容易に上皮細胞に取り込まれ、運ばれたeosinYは核周辺部に溜まった。ナノスケールの大きさをコントロールできる安定したカプセルの調整法を確立した。さらに様々な溶液や薬物を運べる生体適合性のある魅力的な運搬材料のペプチドカプセルの可能性も明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
ペプチドベクターを直接動物に投与し、遺伝子治療を行うには、欠損タンパク質の代替えとして遺伝子治療により発現させるたんぱく質量が少なく貴重な動物を用いた実験にはまだ移行できなかった。そこでまだベシクル作成法や投与条件の改良が必要と考えた。そこでまずベシクルの状態を詳細に検討し、ベシクル間の融合によるサイズの変動が見つかった。この点を明らかにし、この変動をコントロールできる条件や方法を見出すのに時間を費やした。また発現量のさらなる向上や投与法などの再検討にも時間が必要である。
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今後の研究の推進方策 |
穴の大きさが違う100 nmや30 nmのポリカーボネート製フィルターを使用して直径20~60 nmや20~30 nmに低温下にし調整したカプセル(ベシクル)を培養細胞に加え遺伝子導入率の効果の向上が認められるか再度検討する。遺伝子導入率が向上し、直接実験動物に投与しても有効な発現が可能と判断した場合は動物実験に移行する。しかしまだ十分な発現量を示さなかった場合は、ファブリー病由来の細胞株に投与し、細胞レベルのでの治療効果について検討を行う。また発現した細胞を集め培養を繰り返して細胞量を増やして、これらを動物に投与し治療効果があるか検討を行う。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成25年度に行っている遺伝子導入率の改善並びに最適化について検討を行っているが、動物実験に移行できるだけの満足な結果が得られていない。そのためもう少し時間をかけて細胞レベルでの遺伝子導入率の改善策の検討を行い、動物実験失敗のリスクを減らした上で、貴重な実験材料であるモデルマウスを使った動物実験に移行したい。 平成25年度は動物実験レベルに移行できなかっため、次年度に動物実験を行いたい。そのため次年度の未使用額の使途内容は、動物の購入及び維持管理、並びに化学合成ペプチド化合物関連の消耗品などの購入を予定している。また研究協力者である米国カンザス州立大学のTomich教授と研究打ち合わせ並びにペプチド合成と精製のための渡航費用に使用する予定である。
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