研究課題/領域番号 |
23591307
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
孫 徹 京都大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (60572287)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | レプチン / 肥満 |
研究概要 |
本研究においては、著しいレプチン抵抗性モデルである高脂肪食負荷レプチントランスジェニックマウス(以下Tgマウス)を用いて、レプチン抵抗性状態における、神経核ごとの異常、細胞内シグナル伝達分子ごとの異常を検出しその病態生理的意義を明らかにしたうえで新規レプチン抵抗性改善薬スクリーニングに活かすことを目的としている。研究初年度においては、レプチンTgマウスがわずか1週間の高脂肪食負荷で、体重が依然としてやせの表現型を示しているにもかかわらず、外因性レプチンに対する摂食抑制作用、主要神経核における神経活性化マーカーであるc-fosの発現をアウトプットとしてレプチン抵抗性を呈していることを明らかにした。さらにこの時レプチンの主要な作用標的である弓状核においてはレプチン抵抗性が生じているが、海馬や延髄の孤束核では抵抗性が生じていないことを明らかにした。海馬はレプチンの抗うつ作用に重要と考えられており、海馬においては16週間の高脂肪食負荷でレプチン抵抗性が生じるとの他の研究者からの既報がある。また、孤束核は末梢からの迷走神経入力の統合点と考えられており、孤束核でのレプチン受容体のノックダウンが肥満の表現型を示すとの他施設の既報などと合わせて考慮すると、レプチン抵抗性の出現には神経核ごとの感受性、あるいは出現のタイムコースに違いがあると考えられた。今後この神経核ごとの違いをさらに網羅的に解析し、レプチン抵抗性に重要な神経核を明らかにしていく。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
本研究の最も重要なポイントであるモデルマウスの妥当性の確認を研究初年度で確認できており、当初の計画以上の進展と考える。具体的には本研究のモデルマウスでやせの表現型にもかかわらずレプチン抵抗性を来たすことが確認できており、肥満の影響なしにレプチン抵抗性を解析するという、スクリーニング系確立のために重要なポイントをクリアできていると考える。さらに詳細な解析を進める上でターゲットとなる神経核についてある程度の候補となる核を複数確認できており、こちらも十分な進展と考える。またFRETプローブによる検出系については本研究計画申請時にはFRETプローブを恒久的に十分量発現する細胞株の作成は不可能とされていたため、細胞株を使用した研究は計画中に含んでいなかったが、この間の方法論の発展により、恒久的に十分なFRETプローブの発現量を細胞レベル、生体レベルにおいて維持する方法が相次いで報告されたことを受けて、現在恒久的安定発現細胞株の作成に取り組んでいる。これに伴い、申請時には生体レベル、脳スライス標本レベルとしていたレプチン抵抗性の解析を、細胞レベルでも行うことが可能となる。対象の神経細胞株としてはカナダのBelshamらの開発した不死化視床下部神経細胞株であるHypoE-44を入手しており現在基礎的性格の解析中である。さらに、申請時に研究が計画通りに進まない時の対応として提案したSTAT3-GFP融合蛋白による検出系についても恒久的に発現する細胞株を作成中であり、上述の点と合わせて当初の計画以上の進展と考える。
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今後の研究の推進方策 |
初年度の研究実績により標的とすべき神経核を複数確認できた。それらの一部の神経核ではその部位に特異的にcreを発現するcreマウスがいまだに作成されていないため、脳定位固定によるマイクロインジェクション法によりshRNAを部位特異的に発現させ、レプチンの細胞内シグナルをノックダウンして行く予定である。計画申請書での当初の予定通り、3つの主要なレプチン細胞内シグナルのうち、レプチン抵抗性状態における意義の解析について報告が非常に少ないERKシグナルについて、そのshRNAを用いたノックダウンをまず行う。また2011年末に高脂肪食負荷時早期におけるPI3K系の意義に関する報告がなされたのを受けて(Cell Metabolism 2011)、早期の高脂肪食負荷のレプチン抵抗性に関する影響を増大して検出できていると考えられる本実験系において、PI3K経路についてもERK経路と並行してshRNAによるノックダウンをおこない、各経路のレプチン抵抗性状態における病態生理的意義を、神経核特異的なレベルで解析して行く。さらに研究計画書で挙げたAMPKシグナルとレプチンシグナルとの相互作用に関しても、中枢においては培養細胞を用いて細胞レベルで解析して行くと同時に、本モデルでのレプチン抵抗性状態における中枢のレプチンシグナルと末梢のAMPKシグナルの関係についてもin vivoのマウスよりのサンプルを用いて解析してく予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
現在の研究の進行程度より具体的に以下の状況にあり、当初の予定通りの額を必要とする。すなわち、本研究においては、他と比較した強みである「肥満のなくレプチン抵抗性を起こしているマウスモデル」である高脂肪食負荷レプチントランスジェニックマウスを多く飼育する必要がある。そのためマウスの飼育費として年間800千円を予定している。またモデルの妥当性の評価に必須のインスリン、レプチンなどのホルモンの測定に必要なELISAキットが比較的高価でそれに対する費用が年間で400千円と予定している。さらに遺伝子発現をより詳細に検討するための定量的RT-PCRの試薬が高価であり年間300千円を必要とする。以上より年間1500千円を必要とする。
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