研究課題/領域番号 |
23591379
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研究機関 | 浜松医科大学 |
研究代表者 |
大西 一功 浜松医科大学, 医学部附属病院, 教授 (80252170)
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研究分担者 |
藤江 三千男 浜松医科大学, 学内共同利用施設等, その他 (90397373)
柴田 清 浜松医科大学, 学内共同利用施設等, その他 (80397372)
中村 悟己 浜松医科大学, 医学部, 研究員 (20377740)
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キーワード | メタボローム解析 / 白血病幹細胞 |
研究概要 |
これまでの研究成果により、嫌気的解糖系に関与するヘキソキナーゼ(HK)、ホスホフルクトキナーゼ1, 2(PFK1, 2)、及びピルビン酸キナーゼ(PK)が白血病患者由来ALDHhi/CD34+細胞において正常造血幹細胞と比較して活性化していることが明らかとなり、これらを阻害することにより白血病由来ALDHhi/CD34+細胞のコロニー形成能が著しく抑制されました。(1)白血病由来ALDHhi/CD34+細胞と健常人由来ALDHhi/CD34+細胞の細胞障害評価:HK阻害剤としてヘキソキナーゼII阻害剤(3-BP)、PFK1, 2阻害剤としてPFKFB3阻害剤(3PO)、PK阻害剤としてAlkanninを使用しました。3-BP単独、3PO単独、Alkannin単独、3-BP/3PO併用、3-BP/Alkannin併用、3PO/Alkannin併用、及び3-BP/3PO/Alkannin併用群に分けて、各種の濃度で白血病由来ALDHhi/CD34+細胞のコロニー形成抑制能を評価したところ、3剤併用群が最も強力に白血病細胞の増殖を抑制した。一方、健常人由来ALDHhi/CD34+細胞のコロニー形成はどの組み合わせにおいても優位な抑制効果は認められなかった。 (2)白血病由来ALDHhi/CD34+細胞移植実験:フローサイトメトリー解析ALDHhi/CD34+細胞を分離し、免疫不全マウス(NOD/SCIDヌードマウス)へ移植。3週間後に生着を確認し、腫瘍形成部位に3-BP単独、3PO単独、Alkannin単独、及び3-BP/3PO/Alkannin併用群に分けて注射する(3日後と1週間後)ことによる腫瘍体積の変化を3週間経過観察したところ、3-BP/3PO/Alkannin併用群において優位な腫瘍形成抑制効果が認められた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成24年度の研究計画・方法について、(1)白血患者及び健常人由来のALDHhi/CD34+細胞単核球を採取。(2)白血病由来ALDHhi/CD34+細胞と健常人由来ALDHhi/CD34+細胞のメタボローム解析から得られた白血病幹及び前駆細胞に特異的な代謝経路の阻害剤(HK阻害剤としてヘキソキナーゼII阻害剤(3-BP)、PFK1, 2阻害剤としてPFKFB3阻害剤(3PO)、PK阻害剤としてAlkannin)を用いて白血病細胞の増殖能をコロニー形成抑制にて評価した。(3)白血病由来ALDHhi/CD34+細胞をヌードマウスの背部皮下に移植し、担癌マウスを作成し、腫瘍部位に上記の阻害剤を単独、あるいは組み合わせで皮下投与することによる抗腫瘍効果を腫瘍体積の変化率で評価した。 今年度の研究計画としてはほぼ予定通りに達成することができていると考えています。
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今後の研究の推進方策 |
本研究結果から得られた白血病幹細胞における特異的な代謝経路に基づき、代謝経路を阻害あるいは遮断することによる白血病幹細胞の増殖制御を可能にする治療法を確立することを目指していきたいと考えます。(1)白血病由来ALDHhi/CD34+細胞と健常人由来ALDHhi/CD34+細胞の細胞障害評価:同定された代謝経路の阻害剤を添加することによる白血病由来ALDHhi/CD34+細胞と健常人由来ALDHhi/CD34+細胞のコロニー形成能を評価する。代謝経路阻害剤としては、既存の化合物の中から検索していく。また、既存の化合物が存在しない場合は、標的蛋白質に対するドッキングシュミレーション等を行うことにより、化合物合成を行っていく予定です。この場合は、新たな化合物合成と新規抗がん剤物質生成も並行して行う予定です。(2)白血病幹細胞の分離と白血病幹細胞移植実験:フローサイトメトリー解析によりALDHhi/CD34+細胞を示す表面形質をもつ白血病幹細胞を免疫不全マウス(NOD/SCIDヌードマウス)へ移植することにより、再現性のある白血病発症の確認を行い、代謝経路阻害剤投与による白血病発症抑制効果を生存率により評価する。(3) 正常造血幹細胞への細胞障害活性の評価 (4)新規化合物の探索:エネルギー代謝経路における標的酵素蛋白質を同定することにより、その蛋白質を特異的に阻害する物質、つまり、白血病幹細胞の代謝システムのキーとなる酵素を選択的に阻害する化合物を合成することで副作用がなく、治療効果の高い抗がん剤の実現を目指したいと考えています。また、正常、白血病幹細胞のメタボ―ローム解析の症例数を増やして検討することも継続していく予定です。
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次年度の研究費の使用計画 |
(1)物品費:1)ヌードマウスを含めた動物実験関連物品、2)アポトーシス実験関連、3)Western blot解析関連試薬・物品、4)細胞培養関連試薬、5)細胞増殖抑制実験関連試薬。6)メタボローム解析関連試薬などを購入予定です。 (2)旅費:研究成果については血液学会、分子生物学会、日本癌学会、米国血液学会、米国癌学会、米国臨床癌学会等の学会で発表予定であり、そのための旅費として使用する予定です。また、その他研究会への参加や研究打ち合わせのための旅費として使用する予定です。(3)謝金・人件費など:メタボローム解析などを行っていただくための謝金として支出させていただく予定です。
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