研究課題/領域番号 |
23591824
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研究機関 | 和歌山県立医科大学 |
研究代表者 |
佐藤 守男 和歌山県立医科大学, 医学部, 教授 (50154109)
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研究分担者 |
河合 信行 和歌山県立医科大学, 医学部, 講師 (90405423)
生駒 顕 和歌山県立医科大学, 医学部, 助教 (60458065)
園村 哲郎 和歌山県立医科大学, 医学部, 准教授 (60264892)
南口 博紀 和歌山県立医科大学, 医学部, 助教 (90364091)
中井 資貴 和歌山県立医科大学, 医学部, 助教 (30464671)
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キーワード | 溶解型ゼラチン / マイクロスクエア / IVR |
研究概要 |
東日本大震災により、溶解型ゼラチンマイクロスクエアを作成するゼライス株式会社が被災したことにより、溶解型ゼラチンマイクロスクエアの作成が大幅に遅れており、溶解型ゼラチンマイクロスクエアを用いた基礎実験ができずにいる。このため、マイクロスクエア化されていない溶解型ゼラチンを用いた正常豚を対象に、経カテーテル動脈塞栓術における抗癌剤の徐放性および、正常組織に対する障害について、従来臨床の場え使用されてきたゼラチンスポンジと比較検討した。抗癌剤の徐放性については前年度に報告済みである。 今回、正常豚の脾動脈を異なるゼラチンスポンジ(従来型ゼラチンであるSpongelと溶解型ゼラチンであるRM-Gelatin)で塞栓し、その塞栓効果及び組織障害を比較検討した。正常豚5頭に対して、Spongel を造影剤(Iopamiron 370)10mlにて混和し、脾動脈塞栓術を施行。また、正常豚5頭に対して、RM-Gelatin (50kDa、130℃熱架橋)を造影剤(Iopamiron 370)10mlにて混和し、脾動脈塞栓術を施行。塞栓前、直後、30分後、約1時間後、2時間後、3日後に血管造影を施行。再開通性の評価を行い、塞栓3日後にそれぞれの豚をと殺。脾臓を摘出し、10%ホルマリン液で固定し、HE染色を行い、脾臓の組織障害の程度を比較検討した。短時間溶解型ゼラチンであるRM-gelatinはSpongelと比較して、組織障害が少なく、約60分で溶解する。RM-gelatinでは、少なくとも30分間は十分な塞栓効果が認められる。RM-gelatinでの塞栓時は、二次血栓形成が示唆され、それに伴う塞栓時間延長の可能性はあり、できるだけ選択的に塞栓するのが望ましい。正常組織の障害をできるだけ少なくしたい場合の一時止血や短時間の塞栓効果を期待する分野において、新たな一時塞栓物質となりえる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
東日本大震災により、溶解型ゼラチンマイクロスクエアを作成するゼライス株式会社が被災したことにより、溶解型ゼラチンマイクロスクエアの作成が大幅に遅れており、溶解型ゼラチンマイクロスクエアを用いた基礎実験ができずにいる。このため、マイクロスクエア化されていない溶解型ゼラチンを用いた正常豚を対象に、経カテーテル動脈塞栓術における抗癌剤の徐放性および、正常組織に対する障害について、従来臨床の場え使用されてきたゼラチンスポンジと比較検討した。我々の検討では、溶解型ゼラチンは抗癌剤であるシスプラチンの徐放性を有していること、また、従来のゼラチンスポンジに比し、肝臓や脾臓など正常組織に与える組織障害は少ないことが判明した。 H25、6月にようやく溶解型ゼラチンマイクロスクエアが完成する旨を聞いているため、今後の実験は進行する見通しがたった。
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今後の研究の推進方策 |
正常豚を用いた動物実験を施行し、ゼラチンマイクロスクエアを使用し、その塞栓性および抗癌剤の徐放性を検討するし、今まで行ってきた、マイクロスクエア化していない、短時間溶解型ゼラチンでの抗癌剤の徐放性および組織障害と同等の結果を示すことを確認する。
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次年度の研究費の使用計画 |
正常豚10頭を使用し、動物実験を行う。大腿動脈から5Frシースおよび造影カテーテルを挿入し、肝動脈造影を施行。マイクロカテーテルを先進させ、左肝動脈をゼラチンマイクロスクエア(7日で溶解し、250μm粒子、5-FU 500mg/ゼラチン50mgを吸収させたもの)を用いて塞栓する。まず、溶解型ゼラチンマイクロスクエアによる肝動脈の塞栓性を放射線学的および病理学的に検討する。また、塞栓後の再開通性(時間と再開通の程度の関係)を明らかにする。次に、肝動脈塞栓後の肝組織をはじめ生体に及ぼす有害事象の有無(安全性)を病理学的および血液学的に明らかにする。さらに、肝静脈血中の坑腫瘍薬濃度の推移を測定し、溶解型ゼラチンマイクロスクエアからの坑癌剤の徐放性を明らかにする。
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