研究課題
本研究では標準治療抵抗性乳がん患者を対象としてぺプチドワクチンの開発を目指す目的として2011年度より開始し、今年度は本研究の最終年度となる。当初の研究目的である進行再発乳がんに対するペプチドワクチン(PV)の免疫反応性、臨床的有効性と安全性について検証し、予定な成果をほぼ達成できたと考える。具体的には臨床研究としてのペプチドワクチンによる第2相臨床試験は登録した患者数が72名となり、予定としていた60名を超え、臨床データの解析も予定通り施行した。その結果、半数以上の症例での免疫反応性(抗体反応:51~54%;細胞性免疫反応:33%)と一定な臨床効果(有効率:14%;病勢抑制率:70%)も得られ、さらに標準治療抵抗性乳がん患者において中間無増悪生存期間7.5カ月、中間生存期間15.9カ月と現存な標準治療に比べても遜色のない良好な治療成績が得られている(2013年San Antonio乳がん国際学会、2014年日本外科学会発表済み、論文投稿中)。また、付随研究として進行再発乳がんの生物学的組織型(サブタイプ)別に置いて、免疫反応性は乳がんサブタイプに関係なく、高率に抗腫瘍免疫の誘導(ER陽性タイプ:96.6%;トリプルネガティブタイプ:100%;Her2陽性タイプ:100%)が可能であった。従って、PV療法は乳がん治療においてサブタイプに応じて対応が必要とする現在の標準化学療法、内分泌療法治療と全く異なる作用機序が臨床的に示唆され、従来の標準化学療法、内分泌治療では得られない治療効果が期待される。本研究を通し、標準治療抵抗性乳がんに対し、ぺプチドワクチン療法の可能性が示唆された。本研究で得られた成果を今後、臨床的に有用性が高いと思われる難治性なトリプルネガティブ乳がんを対象とする新たな開発研究に生かすことが可能と確信する。
2: おおむね順調に進展している
臨床試験は予定通り、終了可能となり、登録患者数も計画より超過している。データ解析もほぼ完了し、各種国際、国内学会において結果が報告され、論文投稿中である。付随基礎研究は抗体入手などの問題もあるが、逐次に実験結果が得られており、順次にまとめて報告する予定である。
本研究で使用された7種類の異なるHLA-クラスI分子(HLA-A2,A3,A11,A24,A26など)のいずれか陽性の症例に対して2種類以上のペプチドワクチンのそれぞれの由来抗原蛋白の発現率を解明するため、免疫組織学染色などを進行中で、抗体入手などが順調であれば、予定通り、完了可能と考える。さらに、より客観的に臨床的効果を評価するため、循環血液中遺残がん細胞(CTC)についての検討も進行中であり、解析機械の安定性や使用する抗体などの適性を検証中である。
免疫組織学的試験用の抗体の発注遅れなどのため、次年度に追加試験を行い、本研究を完成とする。前年度の繰越研究費を部品費(試薬と材料費)充てる予定である。予算として、免疫染色抗体購入費 約 70万円試験材料購入費 約 30万
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