研究課題/領域番号 |
23592051
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研究機関 | 独立行政法人国立循環器病研究センター |
研究代表者 |
齋藤 友宏 独立行政法人国立循環器病研究センター, 人工臓器部, 派遣研究員 (20598221)
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研究分担者 |
戸田 宏一 独立行政法人国立循環器病研究センター, 心臓血管外科, 医長 (40379235)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2015-03-31
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キーワード | 補助人工心臓 |
研究概要 |
左心補助人工心臓(LVAD)装着下における右心不全に対して心房内シャントを人為的に作成する事で,右心血流を左心系に導き,LVADのみで両心補助が可能になるか否かを検討するための急性動物実験モデルの作成に本年度は主眼をおいた。先ず成ヤギにおいて左第6肋間開胸にて胸腔内へ到達後、圧測定のための圧トランスデューサを内胸動脈、肺動脈幹、右心房内腔、左心房内腔へ直接留置し、電磁流量計を上行大動脈と肺動脈幹に留置する手術手技を確立した。次にLVAD装着手技として、3-0プロリン8針を用い脱血管カフを心尖部に縫着、脱血管を左室内に挿入した。続けて左内頸動脈を展開し送血管を挿入、双方のカニュラを遠心ポンプに接続しポンプと送血管の間には膜型人工肺を設置し、大動物におけるLVAD+人工肺装着モデルを確立した。次にこの実験モデルにおいて心房内シャント作成手技について検討した。人工心肺装着下に開心して直視下にパンチャーを用いて心房中隔に孔を作成することを検討したが、出血のコントロールが難しいため、より非侵襲的にバルーンで心房中隔に孔を作成することを試みた。結果、心エコー下に心房中隔を確認し、左房から挿入した穿刺針にて心房中隔を穿刺し、ここに拡張用のバルーンを通しバルーンを拡張させることで、出血させることなく心房中隔に孔を作成できることを確認した。またLVAD装着下においてはこの心房中隔孔をとおして右左シャントが起こることを心エコ-・ドプラー法にて確認できた。拡張バルーンに関しては直径12mmのものと19mmのものについて検討し、ともに心エコー上十分な右左シャントを生ずるだけの心房中隔孔が開けられることを確認した。また実験終了後、犠死させ確認したところバルーンで作成した孔は心房中隔卵円窩に一致して亀裂状に開いており、19mmでは直径10mmの孔が開くことが確認できた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
初年度の目標は急性動物実験において,手術器械の選定、手術手技の精度を向上させ動物実験モデルの作成に主眼を置くことであった。手術器械の選定については数種類の血管拡張バルーン、心房中隔穿孔用バルーンをためした結果、心房中隔穿孔用バルーンが最も効果的にかつ手技に伴う出血も少なく十分なサイズの心房中隔孔を作成できることが判り、今後このバルーンを使用することとした。手術手技については大動物における補助人工心臓植え込みに多くの経験を有する国立循環器病センター研究所人工臓器部の全面的な指導を受け、大動物でのLVAD+人工肺システムの装着は問題なく施行できた。心房中隔孔の作成に関しては、当初人工心肺装着下に開心して直視下にパンチャーを用いて心房中隔に孔を作成することを検討したが、出血のコントロールが難しいため、より非侵襲的にバルーンで心房中隔に孔を作成することを試みた。心エコー下に心房中隔を確認し、左房から挿入した穿刺針にて心房中隔を穿刺し、ここにバルーンを通しバルーンを拡張させることで、出血させることなく心房中隔に孔を作成する手技を確立した。またこの状態でLVAD+人工肺システムの駆動を開始すると有意な心房間・右左シャントが生じて右心血流を左心系に導くことが可能であることを確認できた。以上より、LVAD装着下において心房内シャントをバルーンを用いて非侵襲的に作成する事で,右心血流を左心系に導くLVAD+人工肺システムが急性動物実験モデルにおいて確立できたと考えられ、実験計画は概ね予定通りに進行していると考えられた。
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今後の研究の推進方策 |
初年度において、LVAD装着下に心房内シャントをバルーンで非侵襲的に作成する事で,右心血流を左心系に導く心房内シャント+LVAD+人工肺システムが急性動物実験モデルにおいて確立できた。24年度は、この急性動物実験モデルにおいて右心不全を作成し、LVAD装着後の右心不全に非侵襲的に作成された心房内シャントが如何なる血行動態改善効果があるか検討することを研究の主眼におく。先ず右心不全モデルの一つとして肺高血圧に伴う右心不全モデルを作成する。具体的には肺動脈本幹をフェルトストリップでテーピングし、これを絞扼することで肺高血圧モデルを作成する。肺動脈絞扼の程度を変化させ心房内シャント+LVAD+人工肺システムが良好な循環状態が維持できる右心不全、肺高血圧の程度を同定し、本治療法の適応疾患、適応病態を検討する。ここまでの結果を全国学会、国際学会で発表し、この全く新しい非侵襲的右心補助方法に関して、この分野の専門家と意見交換し、当実験および当システムの更なる改良に生かす。
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次年度の研究費の使用計画 |
初年度と同様に大動物を用いた実験は国立循環器病センター研究所人工臓器部巽部長の協力を得ながら進める。実験データの解析のために実験室の計測機器に直接接続しreal timeに解析が可能なpersonal computerの購入が必要である。また実験結果を国内外の臨床家、研究者と意見交換するための国内、国際学会への出張旅費が必要と考えられる。
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