研究課題/領域番号 |
23592051
|
研究機関 | 独立行政法人国立循環器病研究センター |
研究代表者 |
齋藤 友宏 独立行政法人国立循環器病研究センター, 研究所, 派遣研究員 (20598221)
|
研究分担者 |
戸田 宏一 大阪大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (40379235)
三隅 祐輔 独立行政法人国立循環器病研究センター, 病院, レジデント (20631477)
|
キーワード | 補助人工心臓 / 右心不全 |
研究概要 |
初年度(23年度)において確立した大動物における左心補助人工心臓(LVAD)+ 人工肺システムの装着手術手技、心房内シャントを血管内バルーンを用いて非侵襲的に作成するASD作成術、以上のモデルにおいて右心不全を作成し、LVAD下における右心不全において、心房内シャントを人為的に作成する事で,右心血流を左心系に導き,LVADのみで両心補助が可能になるか否かを検討することを本年度の研究の主眼においた。先ず全身麻酔下の成ヤギにおいてに右心不全モデルとして肺高血圧に伴う右心不全モデルを作成した。LVAD, 心房内シャント作成前の状態で肺動脈本幹を幅10mmのフェルトストリップで絞扼し、肺高血圧に伴い肺動脈血流量が1 L/minになるフェルトストリップの長さを決めた。次にLVAD + 人工肺システムを装着後、心房内シャントを血管内バルーンを用いて非侵襲的に作成した。一旦心房内シャントをバルーンで閉鎖し、この状態で事前に長さを決めておいたフェルトストリップで肺動脈を絞扼しLVAD下の肺高血圧に伴う右心不全モデルとした。肺動脈絞扼により肺血管抵抗は2.7±0.6から9.7±2.1 Wood unitsに上昇し、右房圧も7±3 から14±7 mmHgに上昇し、これに伴いLVAD flowは2.7±0.6から0.9±0.6 L/minに低下し血圧の低下も認めた。この状態で心房内シャントを閉塞させているバルーンを抜去し心房内シャントを開放するとLVAD flowは約3倍に改善し、これに伴い血圧も改善し、右心不全状態でのこのシステムの有効性が示された。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2期目である24年度の目標であった左心補助人工心臓(LVAD)装着下の右心不全において心房内シャントをバルーンで非侵襲的に作成する事で,右心血流を左心系に導きLVAD下での右心不全を改善させる急性動物実験モデルが確立できた。まだ途中段階ではあるが、心房内シャント作成による右心不全の改善、LVAD flow、血行動態の改善も認めた。これらの結果を2012年 米国Southern Thoracic Surgical Association (STSA) Annual meetingで発表し、欧米の外科医、研究者との有意義な討論をすることができた。また本学会での講演内容はAnnals of Thoracic Surgeryへの投稿が認められており、実験を進めつつ現在論文執筆中である。以上より、LVAD下の右心不全に対する全く新しい本治療法の効果は認められ、国際的学会でも評価を受け情報発信することもできており、実験計画は予定通りに進行していると考えられた。
|
今後の研究の推進方策 |
3期目である25年度においては、ここまでに確立させた肺高血圧によるLVAD装着下の右心不全モデルにおいて、右心血流を左心系に導く心房内シャント+LVAD+人工肺システムが急性動物実験モデルにおいて有効であることを確認実証し、論文発表、更なる学会発表により情報発信を目指す。一方で実験としては肺高血圧以外の右心不全モデルで、本法の有用性が検証できるか否か検討を進める。またこのシステムが慢性期においても有効か、そのための慢性動物実験の検討にも着手する。
|
次年度の研究費の使用計画 |
これまでと同様に大動物を用いた実験は国立循環器病研究センター研究所人工臓器部巽部長の協力を得ながら進める。実験データの解析のためのpersonal computer、データの整理解析のためのソフトウエア等の購入が必要である。また実験結果を国内外の臨床家、研究者と意見交換するための国内、国際学会への出張旅費、論文作成のための英文校正費、スライド、イラスト作成費用が必要と考えられる。 なお、動物実験の成功により当初予定していた物品費に残額が生じた。
|