研究課題/領域番号 |
23592651
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研究機関 | 岩手医科大学 |
研究代表者 |
柏谷 元 岩手医科大学, 医学部, 助教 (80347864)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 顔面解剖 / フィルムトランスファー法 / 表情筋解剖 / 顔面脂肪 / 顔面の筋膜 / 三次元解剖 / 顔面の層構造 |
研究概要 |
23年度は御遺体(男性1体)から顔面軟組織を全層で採取し、アルコールによる脱脂、脱水処理後パラフィン包埋して標本を作製した。ミクロトームの試料台に乗せるには大きさの制限があり、この第1標本は特に注目部位である頬部~下顎を中心に作成した。そのため、前額、前頭部は割愛される形となった。予定通り5μの厚さで連続切片を作製した。この際、川本氏考案の粘着フィルム(A4判)を切片の大きさに合わせて短冊状に切り、1枚のフィルムから最大数の切片が得られるように工夫した。切片が移し取られたフィルムはH-E染色用とアザン染色用に交互に取り分け、アルミ製の枠(自作品)に両端を貼って保存した(1枠に8枚貼れた)。ある程度切片が貯まったところで各染色を行った。5リットルの染色液が入るアルミ製の箱を準備し、5枠を一まとめにして1日2サイクル(すなわち計10枠)を行った。1年間でアザン染色35枠(切片としては280枚)、H-E染色25枠(200枚)を作製した。染色後はA4判のアクリル板に資料を貼っていき、約1週間ほど乾燥させた後、スキャナーで取り込み、画像データ(jpeg)として保存した。まだ第1標本全体を連続切片化しえていないので画像データの三次元構築は行っていない。しかし、得られた二次元画像の一部を用いて本研究内容の一部報告ともいえる学会発表(第16回日本顔学会大会、演題名:"Zygomatic line" ~ その成因と形態学的分析)を行った。23年度の研究実施経験から、フィルムトランスファー法は切片のずれや分断がなく、大きな組織切片標本を作製するには実際に著しく有効であることが判明した。難を言えば、大きな切片(約20cm)であるために試料台の微妙な傾きで切片が部分的にかすれたり、厚くなったりすることが時々起こるが、正確な操作と慣れにより克服できる可能性が高いと考えている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
1体目は23年度内に終えている予定であったが、薄層切片作成に思いのほか時間がかかり、年度内に1体目を終了できなかった。操作は手動であり、ミクロトームの調子(滑り具合)に作業スピードが左右されたり、刃の交換や滑走面の研磨といったメンテナンスが頻回に必要であった。このため、以後の染色と画像スキャンが遅れてしまった。しかし、この1年間で機械操作や切片をうまく採取するコツにはだいぶ慣れた感がある。次年度はもう少しスピードアップして進めていけるものと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
第1標本(つまり1体目)については、残りの作業を迅速に進め、完結させる。画像データの三次元構築は第2標本の切片作成、染色作業と並行して進めていく。すなわち、切片を早く取り貯めておくことが今後の研究全体の進捗にとって重要と考えている。なお、第1標本は組織を矢状断で連続切片化したが、第2標本は骨のまま脱灰した後、水平断で切片化することを考えている。これは、矢状断では外側に行くに従い組織を斜めに切ることになる欠点を補おうとするためである。また、第1標本ではH-E染色とアザン染色の2種を行っているが、今までの観察から表情筋と被膜など線維性構造の染め分けや結果的に得られる情報については格段にアザン染色の方が優れており、作業効率などのためにもアザン染色1本化にすることを検討している。24年度中に第3標本まで着手しておきたいと考えている。
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次年度の研究費の使用計画 |
もっとも費用のかかるのは川本氏フィルムであり、研究が順調に進めば年間研究費の約半分をそれに充当することになるが、費用配分としては当初の予定通りである。画像データ保存用のハードディスクやメディア等は、昨年度のデータ保存量がやや少なかったため購入費が抑えられたが、今年度はデータ量が上回ると思われ、費用がやや多くかかる見込みである。ただし、昨年度、研究環境を整える目的で使用した物品費が今年度はさほど必要でないと思われ、予算内で予定費用はほぼ賄える見込みである。費目内訳の大幅な変更の必要性はない。
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