研究課題/領域番号 |
23592651
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研究機関 | 岩手医科大学 |
研究代表者 |
柏谷 元 岩手医科大学, 医学部, 助教 (80347864)
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キーワード | 顔面解剖 / 表情筋解剖 / 三次元構築画像 / 顔面軟組織 / 顔面形態学 |
研究概要 |
平成23年度に引き続き御遺体より採取した顔面軟組織の大型薄層切片の採取、染色を行った。その方法は計画通りであり、資料をパラフィン固定したのちミクロトームで厚さ5μで切り、特注フィルムトランスファー法で移し取るという方法である。その後、染色をアザン染色、ヘマトキシリン・エオジン染色にて行い、画像は高解像度スキャナーで取り込んでデータとして蓄積した。24年度は御遺体1体の顔面半側のデータ収集が8割程度実施できた。これら切片作成、染色、取り込み作業と並行して、24年度後半からは画像三次元化構築へ向けたコンピューター処理を試行錯誤しながら実践を試みた。ところがこの段階で2つの困難に行き当たった。それは、実際に三次元化する初期段階で各画像の位置合わせに手間取ること、1枚当たりの画像サイズが比較的大きい(約30~40メガバイト)ため、枚数が増えるにつれ処理速度が低下し、最終的にソフトがフリーズしてしまうこと、であった。この問題を打開するため、本研究に適したコンピューター環境が必要と考え、24年度後半の研究予算を控えめに制限し次年度へ繰り越すことで、次年度初頭に画像処理用ワークステーションの購入を計画している。 なお、全体の画像三次元化は未完成ではあるが、多数の二次元画像を入手したことで新たな解剖学的知見が徐々に得られている。その中には臨床的に有用な新たな概念へつながるものがあり、24年度内に2つの国際学会で発表の機会を得た。第11回日韓形成外科学会と第1回アジア臨床解剖学会である。特に後者は今までの私の研究内容を知る国内の解剖学者からの要請を受けての国際シンポジウムでの発表であった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
実施検体数としては当初の計画よりやや遅れており、24年度末の時点で2個体目(御遺体として2体目)に取り掛かっている予定であったが、現在1個体目の最後の部分を作業中という段階である。遅れている理由には、次の二つがあり、第1点は薄層切片が連続で必ずしも正確に採取できない、すなわち厚さが微妙にずれたり、辺縁が欠けたりして随所にミクロトームの調整作業が入ってしまうこと、第2点として染色の精度に若干のばらつきが出てしまうこと、が挙げられる。また、上記(研究実績の概要)で示した通り、予定の画像処理が進んでいないことも遅れの原因である。
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今後の研究の推進方策 |
残りの資料作成(切片、染色)を早めに完遂し、次年度前半で2個体分を終了しておきたい。ミクロトームの問題に関しては解剖学講座所有の別のミクロトーム(電動式)に変更する予定である。また、もし今後も進展が遅れるようであれば、研究対象とする範囲を顔面の一部に限定して行うことも視野に入れる。たとえば顔面全体ではなく、頬部、眼周囲、口裂周囲などと範囲を抑えれば、ミクロトームのブレの問題も自ずと軽減し、作業効率はアップするものと考えられる。ただし、本研究ではフィルムトランスファー法を用いて大型切片採取を行うことが独創性の所以にて、切片の大きさには可能な限りこだわってみたい。 このようしてに切片作成、染色を完了させた後は、画像処理に専念する。遅くとも25年度9~10月にはこのような態勢に移行し、本研究の最終目的である三次元化を目指す。 そして25年度内に研究成果を論文としてまとめ、解剖学系の雑誌へ投稿する。
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次年度の研究費の使用計画 |
資料作成に試薬やフィルムなどの消耗品が必須であるほか、データ蓄積用のメディアも研究の進行とともにその都度必要である。さらに、次年度初頭で画像処理用ワークステーション購入も予定となったが、その分は24年度の残額繰り越しで部分的に賄い得ることが計算済みである。今年度の学会参加費や論文投稿費を含めたとしても予算内に収まっており、結果的に全研究費として当初見込んだ予算にほぼ一致する見込みである。
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