最終年度(平成25年度)は前半期で標本作製を終了し、後半期で画像処理に専念した。ただし、専用PCソフトを用いての画像三次元構築については、当初の予定通り順調には実践できず、研究期間内に完遂できなかった。問題点は各切片の色やスライス厚のばらつき、微妙な位置ずれであり、出来上がった画像はスムーズさにやや欠けていた.これについてはデータ処理法の問題であるので、さかのぼって適宜修正し、より精度の高い再構築は可能と思われ、今後も作業を継続していく所存である。 全期間を通じて得られた研究結果は、二次元画像をもとにする知見ではあるが、以下のことが列挙される。 ①顔面の表情筋の層構造について言及できた。それは過去に提唱された層分類の概念を覆し、整然と分かりやすい新分類の提唱へとつながった。②顔面に複雑に存在する脂肪を層による分類として提唱できた。その際、各脂肪の局在性は顔面神経と三叉神経などの知覚神経の分布様式に密接に関係するという論理性が確立できた。③表情筋の皮筋としての性質(すなわち皮膚に停止するという性質)に着目し、どの筋が皮膚のどの部分に停止するかなどの詳細を解明できた。④臨床との関係においては、フェイスリフト手術などで取り沙汰される浅筋膜(SMASという)の新解釈を提唱することが出来た。これらの結果については関連する形成外科学系の学会や解剖学系の学会にて発表し、評価を得られたものと思う。なお、大きさ20×5㎝の組織切片をフィルムトランスファー法で採取し、1枚の継ぎ目のない標本として作製、観察する手法についても高い評価を得た。本法のさらなる応用の可能性も示唆された。
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