研究課題/領域番号 |
23592672
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研究機関 | 大分大学 |
研究代表者 |
高橋 尚彦 大分大学, 医学部, 准教授 (30263239)
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研究分担者 |
手嶋 泰之 大分大学, 医学部, 助教 (10457608)
萩原 聡 大分大学, 医学部, 講師 (50527661)
犀川 哲典 大分大学, 医学部, 教授 (60145365)
野口 隆之 大分大学, 医学部, 教授 (90156183)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 虚血再灌流障害 |
研究概要 |
【背景および目的】我々は,遺伝性インスリン抵抗性モデルであるOLETFラット心では,熱ストレスによる,PI3キナーゼ依存性Aktリン酸化→熱ショック蛋白質(HSP72)発現という経路が低下していることを報告した(Taniguchi et al. Diabetes 2006)。今回,アンジオテンシン受容体拮抗薬であるカンデサルタンがこれを回復できるか検討した。【方法】14週齢のOLETFラットにカンデサルタン(0.25mg/kg/day)を2週間投与し,熱ストレス(43℃,20分間)を与えた。【結果】1) カンデサルタンはOLETFラットのインスリン抵抗性を改善しなかった。2) カンデサルタンはOLETFラット心臓におけるPI3キナーゼ依存性Aktリン酸化およびHSP72発現を回復させた。3) OLETFラット心では心筋内アンジオテンシンII(AngII)濃度が亢進しいたがカンデサルタンはこれを抑制した。4) OLETFラット心ではPTENのリン酸化が亢進していたがカンデサルタンはこれを抑制した。培養心筋細胞においても,AngIIはPTENのリン酸化を促進したがカンデサルタンはこれを抑制した。5) 高脂肪食によるインスリン抵抗性ラットにおいても,HSP72発現,Aktリン酸化,PTENリン酸化に関して同様の結果が得られた。6) ランゲンドルフ装置を用いた摘出心灌流実験において,OLETF心の虚血再灌流障害をカンデサルタンは改善させた。【結語】心筋内AngII増加に示される潜在的なレニンアンジオテンシン系の賦活化およびPTENのリン酸化がOLETF心におけるHSP72発現減弱の病態であり,カンデサルタンはこれを改善することが示された(Taniguchi Y, Takahashi N, et al. Cardiovasc Res. 2011 Dec 1;92(3):439-48.)。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
「研究実績の概要」に示した実験系のほか,現在,部分腎摘出による慢性腎不全-心房細動モデルを作成し,これに対する新規抗酸化物質(DHLHZn)の有効性を検討中である。DHLHZnは,慢性腎不全-心房細動モデルの心房線維化を抑制し,NADPHオキシダーゼの構成分子発現を抑制することを確認している。このように現在,虚血再灌流障害モデルおよび慢性腎不全-心房細動モデルの2つの実験系を推進している。成果の一部はすでに,Cardiovasc Resなどimpact factorの高い欧米誌に受理掲載されており,また,国際学会および国内学会でも成果を発表している。当初の目標に近い進行が得られている。
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今後の研究の推進方策 |
研究1-心臓虚血再灌流障害におけるDHLHZn有効性の検討:これについては,ミトコンドリア障害を,ミトコンドリア内膜膜電位および電子顕微鏡による形態評価によって定性・定量評価し,DHLHZnの有効性を詳細に検討する予定である。研究2-部分腎摘出による慢性腎臓病-心房細動モデルにおける,DHLHZn有効性の機序を,ウレミックトキシンへの抑制効果という観点から推進する。すなわち,インドキシル硫酸を細胞に作用させ,炎症性線維化シグナルを惹起させることを確認したうえで,DHLHZnがこのシグナルを抑制することを示す。また,生体ラットにウレミックトキシンを持続静注し,左房に線維化が惹起されることを示したうえでDHLHZnがこれを抑制することを証明する。
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次年度の研究費の使用計画 |
消耗品として,実験動物(新生仔ラット付きSDラット),ROS産生や細胞障害検出のための染色液,ウエスタンブロットに用いる基本的試薬や抗体,高感度OHdG、microRNAの発現測定のためのPCRキットや抑制に使用するアンチセンスに研究費を使用予定である。また手術に用いる小器具についても必要に応じて購入する。また,その成果を,主要な国際学会(米国心臓協会学会:AHA)や国内学会(日本循環器学会等)で発表するための旅費としても使用する予定である。
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