研究概要 |
救命救急センターにおける腹部緊急手術は手術で救命できた場合も高頻度に術後腸管癒着が発生するが、腸管癒着に対する予防法、予防薬は未だ確立されていない。今回、我々は癒着形成メカニズムの重要因子であるPAI-1とSTAT1の発現を抑制するPAI-1 siRNA vectorとSOCS1 expression vector(特異的にSTAT1を抑制する)を作製しこれらを用いて、マウス腸管癒着モデルで予防効果と安全性を詳細に検討した。 AI-1に対する5種類のsiPAI-1を合成し、そのノックダウン高率の検定を行うことで最適なssiRNAを決定した。本研究では、HVJ Envelope vector Kitを用いて、このsiRNAをtransfectionすることでsiPAI-1 HVJ Envelope vectorを作製した。続いて、SOCS1 cDNA plasmid vectorを用いて、SOCS1 expression HVJ Envelope vectorを作製した。作製したそれぞれのvectorをマウス正常腸管細胞株にtransfectionし、SOCS1の増強・STAT1の低下・PAI-1の低下をリアルタイムPCR法並びにWestern blot法で行うことでIn vitroにおける作製vectorの発現効率は動物実験に使用できるレベルにあると確認した。 BALB/cマウスを用いて術後腸管癒着形成モデルを作製し、A: Control群、B: SOCS1群、C: PAI-1 siRNA群、D: SOCS1+PAI-1 siRNA群、F: HGF (positive control)群の5群(各群:n=7)を設定し、比較検討した。まず癒着の程度と組織像だがA,B,Cの3群に差は無かったが、D群で優位に癒着は改善しておりF群と同等の結果であった。現在、再現性を確認中である。また、それぞれの群での骨髄、肝臓や腎臓への副作用は認めなかった。PAI-1, STAT1, SOCS1, IFN-γの相対的mRNAレベルと発現蛋白レベルは現在解析中である。 今後、術後腸管癒着形成モデルを用いたSOCS1 HVJ vector・PAI-1 siRNA HVJ vector とHGFタンパク質投与における併用効果を検討した上で、論文を作成し、投稿する予定である。
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