研究課題/領域番号 |
23592910
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
鄭 漢忠 北海道大学, 歯学研究科(研究院), 准教授 (80180066)
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研究分担者 |
吉村 善隆 北海道大学, 歯学研究科(研究院), 助教 (30230816)
菊入 崇 北海道大学, 歯学研究科(研究院), 助教 (10322819)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | ビスフォスフォネート |
研究概要 |
ビスホスホネート(BP)製剤服用者に発症する、抜歯後の顎骨壊死(BRONJ)は、歯科臨床において重大な懸案事項となっており、BRONJの治療法あるいは予防法を確立することは重要な課題である。そこで研究では、非ステロイド系の消炎鎮痛剤であるアセチルサリチル酸が、BRONJ発症を予防することが可能であるかを検討した。 実験には第3世代のBP剤であるZometaを屠殺までの期間毎週1回、尾静脈から静注を行った。Zometa静注開始一週間後に上顎臼歯(m1)の抜歯を行った、抜歯8週間後にアセチルサリチル酸投与群と非投与群で、以下の項目について検索を行った。1. 抜歯窩の肉眼的所見、軟レントゲンを用いた抜歯窩の治癒状況の確認。2. 脱灰後に薄切片を作成し、抜歯窩周囲の組織学的所見の検討。3. 屠殺前に血液を採取、血清中のPGE2, INF-γ, TNF-α量をELISA法にて測定。 抜歯8週後の抜歯窩の状況は肉眼的および軟レントゲン写真上において、アセチルサリチル酸投与群および非投与群では明らかな差を見られなかった。脱灰後に作成した上顎骨のHE染色切片では、アセチルサリチル酸投与群では非投与群と比較し、抜歯窩周囲において消失している骨細胞の数が減少していた。また、血清中のPGE2およびINF-γ濃度は、アセチルサリチル酸投与群では、非投与群と比較し減少していたが、TNF-αは投与群および非投与群ともに検出されなかった。 以上の結果から、アセチルサリチル酸によるPGE2の産生抑制によって、抜歯窩周囲の炎症作用の増強を抑制され、BRONJの発症が緩和されたもと推測された。本実験結果から、アセチルサリチル酸の服用によってBRONJの発症を抑えられる可能性があることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の研究計画に沿って研究が進んでいると思われる。さらに、新しい関連性のある知見が得られており、大きな成果を上げられる可能性が出てきている。
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今後の研究の推進方策 |
今年度は、昨年同様に、BRONJモデルマウスを用いた実験の他に、実験動物で得られた情報に関して株化細胞を用いて細胞レベルで更に詳細に検討を行う予定である。BRONJ発症機構におけるアセチルサリチル酸の薬理学的作用について解明する予定である。1.骨芽細胞、間質細胞、マクロファージに対するBP剤の作用に関する実験。 マウス骨髄細胞、頭蓋冠由来骨芽細胞様MC3T3-E1細胞、間質細胞ST2細胞ならびにマクロファージ様Raw264.7細胞を、一定期間共存培養した後に、BP剤を作用させる。培養後に細胞生存度 assay 、細胞増殖 assay 、BrdU assay等を行い、BP剤のそれぞれの細胞に対する影響を調べる。また、炎症性サイトカインの培養上清中への放出量やmRNA発現をそれぞれRT-PCR法やELISA法を行い定量し、BP剤に対する細胞応答について検索する。2.BRONJ発症に対するアセチルサリチル酸の作用に関する検討。 上記の細胞培養条件においてアセチルサリチル酸を作用させ、培養後にタンパク質を回収する。回収したタンパク質はアラキドン酸カスケード代謝経路がどのように関与しているか検討し、炎症反応とBRONJ発症との因果関係について明らかにする予定である。また、培養細胞に対してTUNEL染色およびDNA断片化の観察を行い、細胞内で起こっているアポトーシスについて観察する予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
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