研究課題/領域番号 |
23592910
|
研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
鄭 漢忠 北海道大学, 歯学研究科(研究院), 教授 (80180066)
|
研究分担者 |
吉村 善隆 北海道大学, 歯学研究科(研究院), 助教 (30230816)
菊入 崇 北海道大学, 歯学研究科(研究院), 助教 (10322819)
|
キーワード | 歯学 / 顎骨壊死 |
研究概要 |
ビスホスホネート(BP)製剤服用者に発症する顎骨壊死(BRONJ)は、抜歯窩周囲の顎骨露出を伴う重篤な治癒不全を呈する疾患である。今のところ口腔外科学会のガイダンスでは、BP製剤投与中の患者に対して抜歯等の侵襲的処置を行う場合は、BP製剤の休薬が推奨されている。しかし、BP製剤の休薬がBRONJ発生を予防するという明らかな臨床的エビデンスは存在していない。そのため、BRONJの治療法あるいは予防法を確立することは、我々歯科分野に関わる者にとって重要な課題である。本研究では、すでに確立しているBRONJモデルマウスを用いて、BRONJ予防法を開発する目的で、消炎鎮痛剤であるアセチルサリチル酸がBRONJ発症にどのように作用するか検討を行なった。 免疫不全マウスの尾静脈に、BRONJが発症するのに十分量のZometa(窒素含有の第3世代BP製剤)を静脈注入した後に上顎臼歯の抜歯を行なった。抜歯後にマウスを屠殺し、抜歯窩周囲に発症しているBRONJの重篤度について肉眼的あるいは組織学的に検討を行ない、BRONJ発症に対するアセチルサリチル酸の抑制効果について検討を行った。アセチルサリチル酸投与群では、非投与群と比較し、抜歯窩周囲における顎骨壊死範囲が縮小していた。また、血清中の炎症性サイトカインであるPGE2およびINF-γ濃度は、アセチルサリチル酸投与群では、非投与群と比較して減少していた。以上の結果から、アセチルサリチル酸によるBRONJ抑制効果は、アセチルサリチル酸によるPGE2の産生抑制によって、抜歯窩周囲の炎症作用の増強が抑制されたことにより、BRONJの発症が緩和されたもと推測された。本実験結果から、実際の臨床においてもアセチルサリチル酸の服用によってBRONJの発症を抑えられる可能性が高いことが示唆された。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の研究計画に沿って順調に研究が進んでいる。さらに、昨年の時点と比較して新しい知見が得られており、今年度の実験を継続することでさらなる成果を上げられる可能性があると考えている。
|
今後の研究の推進方策 |
次年度は、本年度同様に、BRONJモデルマウスを用いた実験の他に、実験動物で得られた情報に関して株化細胞を用いてアセチルサリチル酸によるBRONJ抑制効果のメカニズムに関して詳細に検討を行う予定である。BRONJ発症機構におけるアセチルサリチル酸の薬理学的作用について、骨芽細胞、間質細胞、マクロファージに対するBP剤の作用に関して検討を行う予定である。実際には、マウス骨髄細胞、頭蓋冠由来骨芽細胞様MC3T3-E1細胞、間質細胞ST2細胞ならびにマクロファージ様Raw264.7細胞を、一定期間共存培養した後に、BP剤を作用させ、培養後に細胞生存度 assay、細胞増殖 assay、BrdU assay等を行い、BP剤の培養細胞に対する影響を調べる。また、炎症性サイトカインの培養上清中への放出量やmRNA発現をそれぞれRT-PCR法やELISA法を行い定量し、BP剤に対する細胞応答について分子生物学的に検索を行なう予定である。
|
次年度の研究費の使用計画 |
歯学研究科の耐震補強工事が行われ、動物実験施設もその対象となり、動物飼育数を一時的に減少させた。研究計画の遅れはないが、今年度減少させた動物実験の数を次年度増加することにより、研究費を使用する予定である。
|