研究課題/領域番号 |
23614029
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研究機関 | 佛教大学 |
研究代表者 |
赤松 智子 佛教大学, 保健医療技術学部, 教授 (80283662)
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キーワード | 観光学 / リハビリテーション / ヘルスツーリズム / パーキンソン病 / QOL / 余暇活動 / 京都 / 社会心理学 |
研究概要 |
本研究の目的は、パーキンソン病(Parkinson's disease ; 以下PD)の人の健康状態および生活の質(Quality of life ; 以下QOL)の維持向上を図るため、観光資源の活用と有効性について科学的根拠を提示することである。 研究期間の2年目にあたる平成24年度は、京都市および市外・他府県在住のPDの人から病態や生活について情報収集を行い、これまでに利用した観光資源とその行為について聞き取り調査を行った。 PDの人が、訪問を希望する京都市内外の観光地について現地調査を行った。現地調査では、敷地内における環境;(訪問時の気温や湿度、施設内での移動距離、段差および手すりの有無、手すりに替わる構造や形態および様式、路面状況、休憩場所、トイレなど)について重点的に調査を行った。また、各施設でのバリアフリーおよびユニバーサルデザイン、福祉サービス状況について可能な限り情報収集を行った。PDの人が訪問を希望する観光地の訪問前後に、PDの人の生体内変化を確認するため脳機能および前頭葉機能、精神・心理機能、運動機能とQOLについて調査を行った。 PDの人が訪問を希望した京都市内の観光地は、これまでに行ったことがない場所である;大河内山荘・嵯峨野トロッコ列車・伏見酒蔵巡り・建仁寺など、10年以上昔に訪問した思い出の場所である;清水寺・詩仙堂・二条城など、新しい施設である京都水族館、その他の施設であった。観光地訪問後、前頭葉機能、幸福感および抑うつ気分、QOLに変化が認められた。運動機能では、観光地訪問後、積極的な散歩や家事・趣味活動をするようになった人がいた。 PDの人が希望する観光地を訪問することは、健康状態やQOLに対してプラスの影響があり、観光資源の活用はPDの人のリハビリテーションとして有効である可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
本年度の目的は、初年度に得られた知見を通して、京都の観光資源を利用したPDの人のリハビリテーションプログラムの作成と、リハビリテーション実施前後の効果判定の手法や指標について確立することであった。 PDの人のリハビリテーションプログラムとしては、本人が希望する京都の観光地をセラピストと伴に訪問する内容を準備し、研究内容に同意の得られたPDの人と観光地を訪問した。また、訪問前後の効果判定の手技や指標には、PDの人の変化を確認するために、前頭葉機能、幸福感、抑うつ気分、QOL、運動機能について測定した。 測定結果からは、観光地訪問後、PDの人の前頭葉機能、幸福感、抑うつ気分、QOL、運動機能において変化を確認することが可能であった。 観光資源を利用したリハビリテーションの今後の展開と応用を考慮し、京都市内のみならず、市外;(京都府宇治市、滋賀県近江八幡市、西播磨地域)についても現地調査を行った。また、リハビリテーションの形態には、個別と集団の場合があることから、個別形態としてセラピストとPDの人1対1の場合、セラピストとPDの人および家族などの同伴者の場合、集団形態としてセラピストと複数のPDの人の場合の設定で、観光地訪問を実施した。 以上の実施状況から、研究目的の達成度については、当初の計画以上に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究の推進方策には、以下の5項目を予定している。 1.平成24年度に得られた種々の情報を解析し、ヘルスツーリズムの観点から質的分析を行う。また、聞き取り調査により得られたPDの人の観光行為に関する情報の分析を行う。 2.本研究に対して協力が得られるPDの人に対して、前年度に立案したリハビリテーションプログラムと同様の方法で実施し、さらに事例数を増やす。 3.現地調査を行った観光地についての情報をまとめ、公開できる内容の整理を行う。 4.PDの人に対するリハビリテーションの手段として観光資源を利用するにあたり、ヘルスツーリズムを行っている場所や地域を視察し、参考となる情報や事例を収集する。 5.PDの人の健康状態とQOLの維持向上を図るため、観光資源の活用と有効性について科学的根拠を提示するため、PDの人の生体内(脳機能)変化の測定手段を検討する。
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次年度の研究費の使用計画 |
3年前の本研究計画立案時には、研究開始2年目に生体機能測定のための備品(アクティブトレーサーシステム;単価1865000円)の購入を予定していたが、研究遂行上、適切でないと判断し購入していない。平成24年度未使用金は、次年度以降の研究費として使用することとし、以下の内容を予定している。 物品費には、観光資源を活用したリハビリテーション実施前後の生体機能の変化を測定するため、自律神経機能の活動を測定する携帯型機器を購入する。ヘルスツーリズムの知見について、参考となる国内外の資料や文献、観光学、精神・認知行動学、社会心理学、リハビリテーション関連図書を購入する。 旅費には、京都市内および市外在住者に対して調査を行うための交通費が必要となる。これまでに得られた結果を国内外の学会で発表するため、旅費が必要となる。観光資源をヘルスツーリズムとして利用したリハビリテーション内容を考慮するにあたり、ヘルスツーリズムを行っている場所や地域を視察し、参考となる情報や事例を収集するために旅費が必要となる。 人件費・謝金には、調査研究において、拘束時間と観光地までの往復交通費、PDの人が観光行為実施にあたりレクリエーション保険加入費用を鑑み、被験者に謝金を支払う。観光地訪問時には、被験者の安全性の確保と現地での様子を記録する研究協力者に対して謝金を支払う。自律神経機能の活動や生体内(脳機能)変化の測定方法の検討や実施解析については、高度の専門的知識や技術が必要であるため、専門的知識の提供者に対して謝金を支払う。 その他の費用には、観光地の現地調査時の拝観料や入館料が必要となる。現地調査を行った観光地についての情報をまとめ、公開できる内容の整理を行う上での校正料、欧文の論文作成にあたっての校正料および論文投稿料が必要となる。PDの人との連絡通信のための通信費が必要となる。
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